複雑・ファジー小説

第四章『始動』 ( No.18 )
日時: 2014/03/21 14:44
名前: シイナ (ID: TzDM8OLf)

【3】

「私にしては、らしくない判断だったね。急に襲いかかるなんてさ」
「捕まえたほうが早いと俺は判断したんだよ」

っち、と舌打ちをして、獅子は御笠埜にそう言った。

不機嫌そうに顔を歪める彼に、先ほどまでのような狂気は見られない。

もちろん、狂ったような笑いもその口から飛び出ることはなかった。

「確かにそうかもしれない。捕まえれば拷問も可能だからね。でも、一般人や他人を巻き込んで、あそこまで大きな騒ぎにする必要はなかったんじゃあないかな」
「……まさか『副産物』の使い手だとは思わなかったんだよ」
「副産物?」

きょとんと目を大きく開き、御笠埜は「彼女が?」と言った。

「ああ。あれは間違いなく『副産物』だ。そうでなければ『英霊召喚』なんてできねえだろ」

まあ、あの様子だと本人は気づいてないようだけど、と獅子は言う。
ふうん、と御笠埜は相槌を打って「興味深いね」と返した。

「とりあえず、今回わかったことも含めてもう一回計画を練り直そう。『副産物』も気になるけど、私たちの一番の目的は『サイハテの魔法』なんだから」
「わかってるっつーの」

それで二人の会話は終了した。

目的地までこれ以上の会話はなく、二人は海の上をゆっくりと歩くのだった。