複雑・ファジー小説
- 第一章『少年邂逅』 ( No.4 )
- 日時: 2014/03/29 17:16
- 名前: シイナ (ID: TzDM8OLf)
誰でも、一度は言ってみたい台詞というものがあると思う。
それが実際に言えるかどうかということは別にしても、「あー、言ってみたいなあ」という言葉は絶対にある。
俺にも勿論それはあって、しかしきちんと言えたことは一度もない。
さて。なぜ急にこんな話をしたかというと今の状況に深く関係している。
一度は言ってみたい台詞は、カッコよく決めたくね?
▽▲▽▲▽▲▽▲
目が覚めた。
寝た記憶はないのだが、いったいどうして目が覚める、ということが起こったのだろう。自分でも知らない間に寝てしまっていたのだろうか。
寝返りをうち、障子をじっと見つめて考える。
…障子?
がばっと思いきり起き上がって俺は周りを見回した。
「和室、って、え?」
知らない部屋である。少なくとも、俺の部屋ではない。となれば俺がやるべきことはひとつ。
もう一度布団に入って仰向けに寝て、一言。
「知らない天井だ」
「…どう考えても遅かったりとか」
「だよなぁ…って 、ん?」
思わずそのまま流しそうになって、その声が俺の知らないものだと気がつく。あわてて声のした方に視線を向けると、そこには呆れた顔をした少年がいた。
「なっ…!?」
そいつを見て俺は声を失う。無表情でそこにたたずむ少年が、あまりにも白かったから。
髪も、瞳も、はだの色も。すべてが白く、不気味なほどであった。
「アルビノ、か…?」
彼を見て一番最初に思い浮かんだ病名を言ってみる。恐らく間違いないだろうと思ったが、少年は首を小さく横に振ってそれを否定した。
「違うよ。僕は夕魔。亜木夕魔(あきゆうま)アルビノって名前じゃなかったりとか」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて。えーと、なんだ。アルビノっていうのは病名で…」
そう説明しても彼は小さく首をかしげるだけである。俺もそこまで詳しい知識を持っているわけではないので「わかんないならいいや」とそれ以上尋ねるのはやめにした。
「なあ、ここ、どこだ?」
「僕の家。自転車でぶつかって、きみが倒れたから運んだりとか」
そう言われ俺は倒れたことを思い出し、「あぁ!」と声を上げた。
「俺の鞄は!? バルーン! バルーンの命ぃぃ!」
弱冠暴走ぎみになって俺は布団から飛び出し辺りを見る。しかし部屋のどこにもエコバックはない。
「…鞄ってこれ?」
「それ! それだ!」
アルビノ少年、もとい亜木が俺に見せたのは間違いなく俺のエコバックだった。しかし。
「中身がない?」
「牛乳パックのこと? あれならつぶれてたから棄てたけど?」
その言葉を聞いて俺は腕時計で時間を確認する。時刻は午後6時25分。まだスーパーは開いている!!
「手当てありがとな、亜木少年!!俺は急ぐから帰らしてもらうけど、本当助かった!じゃあな!」
ダッシュで部屋を後にし、幸い目の着く場所、というか廊下を挟んだ場所に靴が置いてあったので、それを履いてその家を後にする。
とりあえず今はスーパーにいかなくては!