複雑・ファジー小説

第二章『予兆』 ( No.7 )
日時: 2013/11/02 06:55
名前: シイナ (ID: PXn4LtCH)

【1】

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私が望むものは近くにありすぎて、それ故、逆に遠く感じるんだ。

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——輪廻転生。

その言葉をたまたま本で見つけて、柏葉柚葉(かしわばゆずは)はページを捲っていた手を止めた。

同時に漏れるのは小さなため息。無意識に起こった、自身の行動に対するものだった。

右手の人差し指と小指にはまった銀色の指輪を撫でる。それは、どうしようもない不安に襲われたときの、彼女の癖である。

図書館ということもあり、柚葉の周りはいつも以上に静かである。いつもは特に気にしないが、今は不安を煽るこの環境が嫌だと感じた。

(・・・ばかみたい。未だに未練に囚われているなんて)

そう分かっていても、どうしても考えてしまう。一度意識してしまったら、なかなか頭から離れなくなってしまった。

無理やり意識を本に戻して。再びページを捲りだすも、集中力が続かない。結局、10分もしないうちに、彼女は本を閉じた。

読んでいた本を定位置に返して、新たに別の本を持ってくる。辞書のように分厚いそれからお目当てのページを見つけて、彼女はぎっしりと書かれた文字を目で追った。

(輪廻転生。またはリンカーネイション。死んだ人間の魂が何度もこの世に生まれ変わることを指す。・・・だめだ。私が知りたいのはこんなことじゃない)

はぁ…、とため息を溢して柚葉はパタン、と本を閉じた。

(私にはまだ時間がある。時計の針は、少ししか進んでない)

だから大丈夫だ、と自身に言い聞かせる。そのお陰で少しだけ落ち着きを取り戻すことができた。


彼女の思いが、誰かに理解されたことはない。しかし、その時はすぐ近くまでやって来ていた。


止まっていた時計の針は、ゆっくりと動き出している。