複雑・ファジー小説

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【罪と輪廻シリーズ第三弾 連載開始!】 ( No.22 )
日時: 2013/12/28 21:29
名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: KG6j5ysh)

 そして、最後に上目遣い。よし、これで完璧だ。
 なんで、ボクがそれを確信できたかというと、教師の眼光が揺らいだからである。きっと、頭の中でなにかを妄想しているのだろう。あぁー、鳥肌が立った。

 この変態教師っ! と、叫びたいところだが、まぁボクが可愛いのはもう決まり切ったことだから、この教師がボクに邪な感情を持つのは仕方が無い。“傍観者ノーサイド”も、
「お前はロリで、可愛いぞ」
とか言ってたし。
 まぁ、殆ど棒読みだったけどな。
 それに、人によって女の好みは違うらしい。『きょにゅう』ってのが好きな奴は、ボクには向かないらしい。意味は、「お前が傷つくからな」といって、“傍観者ノーサイド”は教えてくれなかった。ちなみに、これは余談なのだが、時雨にも聞いて見たところ、俄かに赤面して逃げて行ってしまった。

 まぁ、そんな昔の話はおいておいて。
 あの教師にボクへ何らかの感情を持たせることは、ボクが仕向けたことなのだから、そうなってもらわねば困っていたのだけど、どうやら上手くいってくれた。

 ボクは、心の中で我ながら意地の悪い笑みを浮かべる。それに対比して、顔に浮かべるのは、相変わらず愛想笑い。

「そうか。早く、4組に行くといいぞ」

 教師は、そういうとまた前を向いて授業を再開しようとした。きっと、この教師は『誠の教師』を優先したのだろう。それは、良い事だ。邪なモノに囚われない事も、人間としての試練の一つだからな。

 よし、ここまで順調だ。あとは、教室まで……歩いていくだけだ。

「センセー、この子、さっき廊下で喧嘩してた人だぜ?」

 そう思って、踵を返した時だった。

 さっきまで口を開かなかった不良男が、そう言った。ガタン、と机が派手な音を立てて、男は足を机からおろした。

 彼は、とても面倒臭そうに、一連の動作を進めた。後頭部をがしがしと掻きながら、相変わらず窓の方を眺めている。頬杖をついて。

 いつの間に、ボクの方を見ていたのだろうか、と思ったが、よく考えれば、窓から見えたのかもしれない。とりあえず、そう解釈することにしておいた。

 それにしても、今の彼の発言は、かなり大変だ。
 折角、『ロリ系気弱インドア女子(自称)』になりきっていたのに、喧嘩とか諸々がバレれば、それはガラガラと音を立てて崩れ去ってしまう。

 ああぁー。と叫びたくなるのを抑えて、廊下をさっさと立ち去った。

 立ち去る時に、ちらっともう一度男の方をみると、その男はニヤッと笑いながら、ボクの方を見ていた。いかにも、この悪い空気を楽しんでいるように見えた。
 ついでに名札も見ようかと思ったのだが、この男、名札は出していなかったから、みる事ができなかった。

 そして、大慌てで4組に向かった。
 4組は、廊下の一番端だったが、走ればそんなに遠い事もない。本当は渡り廊下は走ってはいけないけど、今は特別だ。
 教室の前に立つ。そこは、ドアが閉められていた。きっと、中は暖房がつけられているのだろう。
 でも、閉められたドアを開けるのは、かなり勇気がいる行動だ。

 とりあえず、中の確認。窓から中を見渡してみる。
 この教室はなんでこんなに静かなのだろう、と思っていたのだが、どうやら問題を解いているらしい。
 ちらっと見てみたが、その問題もあまり悩むほどのものではなかった。三分で解けるレベルものだ。
 しかし、彼らにはかなり難しいのか、頭を抱える者までいた。
 そして、前もみてみる。

 実は、身長が低かったために窓に届かずに、背伸びしていたのから、そろそろ足も限界がきていた。

 しかし、担任の顔だけは確認しねば。もし、ヤバそうな教師ならば、そんなに安安と教室に入る事ができなくなる。
 強面のゴツゴツした四角い顔の男の教師を想像しながら、教師の顔を確認。そして、ボクは驚いた。

 ——なぜなら、このクラスの教師は、ボクが知っている人だったのだから。
 
「玲子……か?」

【第四話 END】