複雑・ファジー小説

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【罪と輪廻シリーズ第三弾 連載開始!】 ( No.3 )
日時: 2014/07/10 20:18
名前: 凰 ◆ExGQrDul2E (ID: u6EedID4)

<プロローグ>

 “傍観者ノーサイド”。
 これは、何にも興味を持たず、自分以外の全てのモノを平等に扱う男の異名。
 
 “狂った子供チルドレン”。
 これは、全てが狂ったモノだと思い込み、それを排除しようと奔走する幼い少女の異名。

 “規律アテンション”と“無秩序カオス”。
 これは、世界の創始者を守ることを使命とされた二人の男たちの異名。

 彼らは全て、正義であった。
 誰が何と言おうと、彼らは全て正義。見捨てても、壊しても、なにをしても。
 その事実を誰も否定することはできない。否定することは世界を否定することになって、そうしたら、現実を否定することになる。それはいわゆる「現実逃避」になる。だから、否定できなかったし、誰も否定しようとしなかった。

 そして、誰も否定しない日々が続いて、世界は保たれていた。世界の人々が平等に殺され、平等に生きていた。
 だけど、そんなある日。その均衡は壊された。
「それってさ、おかしいですよ。 本当の正義は一つだけです。 破滅と希望、どちらかが正義になりますから。何でも、正解は一つでしょう?」
という、一人の男の言葉によって。
 その言葉が四人の耳に入って、四人は暴れ始めた。今までのように平和のために生きるのではなく、各々で勝手に世界を作ったり、壊したりし始めた。自分を否定されることがなかった彼らは、「否定」されたことの衝撃に耐えられなかった。
 こうなってしまえば、平和な世界は荒らされる。荒れて、荒れて、荒れまくって。
 やがて、四人の関係はぷつりと切れた。今までの四人は協力しあっていた。だが、あの男の否定の言葉の所為で、四人の関係は途切れてしまった。

——さぁ、歯車が狂い始める。
 彼らは、自らの過ちに気づく。世界を壊すことがどういうことか、その核心に気づいてしまう。
 もう、元通りの生活は、取り戻せない。前の日常はもう既に終わりを告げている。
 後戻りできない、この世界は崩壊した。他の誰でもない、自らの所為で。
 振り向くこともできない。後ろを見れば、過酷で冷たい「現実」に追いつかれてしまう。
 前を向いて走れ。泣いても、嘆いても、怒鳴っても、後悔しても、なにも変わらないんだから。そんな無駄な感情を持つだけ無駄だ。ただ、無感情に無表情に、走れ。
 向かう先はどこなのか、それも知らずに、走る。無邪気な彼らの本能に従って。
 
 この狂い始めた世界を直すことは到底不可能に近かった。
 それでも、どうしてもこの世界を元に戻したい四人は、無理やりな自論を世界に突きつけた。俺らならできるから——と。

「狂った歯車を壊せば、元どおりになる。歯車が止まれば、元どおりになるじゃないか」
「狂った歯車を回し続ければ、やがて世界は元に戻る。ほら、数字に公倍数があるように」
「創始者に頼めば、彼が元どおりに戻してくれる」

 これらは、四人の考えだった。対立してしまった、四人の考え。
 ただし、“規律アテンション”と“無秩序カオス”だけは対立することはない。だって、彼らは、二人で一つなのだから。だから、考えも同じ。

 さて、この三つの考え。どれが正しいのか。それは、試さなければわからない。
 しかし、もう最初から決まっていた。「正解は一つなのだ」と。誰が作ったのかも不明な、ただの常識。
 それを覆すのは、数々の矛盾を生み出した四人か。対立しても、求めるものは同じだった、彼らなのか。

 ——まぁ、今この状況で、そんな希望を抱くのは無駄だ。だから、私たち、壊れた世界の住人はどれが正しいのか検証しなければならない。突如、平凡な日々に亀裂を入れられ、意味の分からない論理を突きつけられて。一つずつ、一つずつ、検証しなければならないのだ。

 全ての検証を終えたその先に、——私たちが、歯車が狂った世界の果てに見つけたモノは、いったい何なのだろう。
 希望か、破滅か、ハッピーエンドか、バッドエンドか。
 そして、私たちが心の底から望むモノは何なのだろうか。