複雑・ファジー小説

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【罪と輪廻シリーズ第三弾 連載開始!】 ( No.7 )
日時: 2014/04/01 17:03
名前: 凰 ◆ExGQrDul2E (ID: 06in9.NX)

【第一話】<平和な春> -狂った子供チルドレン-

 今日は、桜の花が咲き乱れている。とっても、綺麗な日。

 ボクは、特に意味もなく、道を歩いていた。笑顔の人達が、私の横を通り過ぎていく。幸せそうな人達をみると、それを壊したくなるのはいつものこと。

 (でも、そんなこと、しちゃいけない)

 ボクは、自分にそう言い聞かせた。そして、立ち止まる。額に何かが降ってきたのだ。それを、額から取ると、目の前に持ってくる。淡いピンク色で、ハートを細長くしたような形のそれは、桜の花びらだった。

——春だなぁ。

 もう春だと分かっているけど、つい、そんなことを思ってしまうのは何でだろう。なんでだろう。

 でも、そんなこと、考えちゃダメっていってるのかな? また、桜の花が上から降ってきた。ボクは、それを両手でキャッチした。
 そういえば、昔はこんな遊びをよくしていたっけ? 友達と一緒に、誰が一番多く集められるか、なんて競争をしていた。
 まぁ、それは、ボクが小さい頃の話で、今はそんなこと、別に興味はなかった。なのに、何故か捕まえてしまったその花びら。
 ボクは、花びらを一瞥した後で、ぎゅーっと握り潰した。二枚の花びらは、私の手のひらの中で潰されてしまった。それが面白くて、その後も何枚か集めては握りつぶした。

 しばらくして、ボクはいつものボクに戻った。やっと我に返ったボクは、周りをキョロキョロと見回す。
 見覚えがある建物が見えた。そこは、丸菜学園の校門の前だったのだ。校門のところには、「入学式」と筆の文字で書かれている紙が、大きく貼り出されている。
「へぇ、今日は入学式かぁ」
 ボクは、そう呟いて、ニヤリと笑った。

 そして、ここまできて、やっとボクは今日の目的を思い出した。さっきまで、全く忘れていた今日の散歩の目的。

 それは、丸菜学園の入学式に出ること。

 そう! 今日、ボクはこの学園に入学するの! もう、全く忘れてて、もうちょっとで意味のない散歩と思いながら帰るところだった! 
 「もうっ、ボクって忘れっぽいなぁ」

 そう呟いて、自分の服装を確かめる。
 いつもの着慣れたワンピースじゃなくて、丸菜学園のセーラー服。白い長袖のセーラー服に、青いリボンとスカートは、よく合ってる……と思う。
 まぁ、いつもワンピースしか着てない私に、そんなファッションセンスは無いから、どんな服でも可愛く見えるんだけどね。 
 そういえば、前のワンピースがもう水を吸わない位に真っ赤になっちゃった時、新しい白いワンピースを買いに行ったけど、レースがいっぱいついているワンピースが何万円もしていて、吃驚した。ちなみに、ボクが買ったのは数千円の安物のワンピースだよ。そんな高いのは、要らないし買えない。
 ま、服の話はどうでもいいや。

 ボクは、丸菜学園の校門を堂々とくぐった。すると、学園の庭の方に、ボクの“保護者役”の人が見えた。

 あの人は、高川 時雨。さっきもいったとおり、ボクの保護者役。ボクが嫌いでは無いけど、好きでもない、ただの保護者役。これは、“傍観者ノーサイド”が決めたことだから、従うしか無い。今は、こんなことに逆らってる時期じゃないから。

「おーいっ、時雨! 来たぞっ」
 ボクは、笑顔で彼に手を振った。

 彼は、校庭のチューリップに触れながら、なにか真剣に考え事をしてたけど、私に気づくと、笑顔で手を振り返してくれた。そして、ボクの方に歩み寄ると、いかにも保護者らしくボクの髪を撫でてくれた。

 だけど、ボクはその手を跳ね返す。

「こら、時雨。 ボクに向かって、少し無礼じゃないかい?」
 ボクは、わざと上から目線で言ってみる。でも、確かに彼はボクよりも位が低いから、ボクは悪くない。
 位に、年齢なんて関係ないからね。
「はは、それはすいません、俺としたことが。 でも、今日は入学式ですし、親の役なので、少しは頭くらい……」
「やだ」

 僕は、彼の言葉を遮って、思いっきり断った。

「君がそういうなら、ボクは思春期の娘だからね、お父さんが嫌いになり始める時期、とでもいって対抗しようかな?」

 ボクがにっこりと皮肉を込めた笑顔で言うと、時雨は「あ、はい、すいません」とこれまた薄っぺらい笑顔で引き下がった。

「よし。 じゃあ、そろそろ会場に行こうかな?」
「そうですね、もうちょっとで時間ですから」

 ボクは、時雨を促し、会場へと向かった。