複雑・ファジー小説

Re: 太陽の下に隠れた傍観者【参照900ありがとうございます!!】 ( No.73 )
日時: 2014/03/09 15:40
名前: 紗倉 悠里 ◆ExGQrDul2E (ID: v2BiiJyf)

【第十六話】<学校でのちょっとした出来事> -白野 夜人-

 真人と別れてから、自分のクラスへと向かう。ドアを開けて、大きな声で挨拶。いつもやってる、俺の習慣だ。
 そして、クラスメート達も、これまた習慣として、挨拶を返してくれる。
 しかし。今日は、その教室に人っ子一人いなかった。隠れん坊をしているのか? と思ったが、いい年した高校生が、朝からそんなことをするはずがない。
 なんで誰もいないんだろう……? しばらく、教室のドアの前で突っ立って、そんなことを考えた。
 と、いきなり窓の外の方から大きな声が聞こえた。

「いけーっ!! シュートだ、弥生っ!」

 そして、その後に大きな歓声が上がった。
 窓の外ということは、彼らが校庭にいる、ということだ。弥生、というのは、耶乃 弥生という、赤髪の男の事で、俺のクラスメートである。程々に、仲のいい奴である。ちょっと性格に難癖があるけどな。
 それにしても、なんであいつら、外に? 窓に駆け寄って、校庭を見下ろす。
 そして、次の瞬間、俺は全てを知る事になる。

 赤のユニフォームを着た奴らと、青のユニフォームを着た奴ら。彼らが取り巻くのは、一つのボール。それは、常に高速で、コートの中を動いている。そして、そのボールをずっと操っているのは、弥生だった。どうやら、弥生は赤のチームらしい。赤い髪の毛に、赤い目。それに加えて、赤いユニフォーム。あいつは、どれだけ赤が好きなんだ。
 そんなことを俺が考えている間にも、ボールはゴールへと向かっていく。青の奴らが盾突こうとも、弥生はそれがなんでもないかのように進んでいく。その速さに、青の奴は追いつけない。そして、シュート。青のゴールキーパーは、呆気にとられている。
 そう、彼らはサッカーをしているのだ。
 俺は思い出した。「今日の一時間目はサッカーだから、早めにきてね?」と担任に言われていたことを。

「うわっ、ヤバッ!!」

 俺は、慌てて体操着を入れた袋を鞄から取り出し、男子更衣室へと向かった。