複雑・ファジー小説

Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.1 )
日時: 2013/12/11 01:55
名前: 桜 ◆N64vfsjfrs (ID: I/L1aYdT)

第一章【歯車は動き出す】
第一節【邂逅 -カイコウ-】
 第一話「非日常に憧れた少年」
      ___僕のこと___


人間は愚かだ。力に怯え、人を差別する。それは人間にとって当たり前なのだろう。僕は人間とは違う、特異なモノ。それは血の繋がった父も、母も、親戚も同じ類に含んでいた。

人間は僕達をLa Mort(ラモール)、又はMorte(モルテ)と呼ぶ。
La Mortはフランス語、Morteはイタリア語で双方共“死神”と言う意味を持つらしい。
人間が僕達を死神と呼ぶ理由は詳しくは知らない。けれど多分、僕達は人間を殺すから、殺せるからそう呼ばれているんだろう。
そして僕達の周りには黒い蝶が飛んでいる。だから黒蝶のイメージも“死神”なのだろう。

僕達は人を殺せる力を持っている。能力は人其々。魔術のようなモノを使う人も居たりする。だから僕達は人間に恐れられた。
人間は人間と同じような僕達に境界線を引いた。
そして時が過ぎ、人間は僕達の底知れぬ力に更に怯え、僕達を___この世から排除することにした。
そして今、僕だけが残った。
まだ幼かった僕は、早くに人の残酷さを知った。目の前で血を流し朽ちていく僕の大切なヒト。
地面が、服が、体が、死体が茜色に、真紅に染まる。
亡父が言った___自分のしたいことをしろ___と。
亡母が言った___大切な人を守りなさい___と。

したいことなんて何もない。
大切なものなんて何もない。

したいこと、見つからない。
大切なもの、全部失った。

なら僕は
___復讐をしよう___

特に意味なんてない。
ただ人間に、同じ痛みを味あわせてやるだけ。
それは娯楽でもない、趣味でもない、仕事でもない。
ただやることが
それしか見つけられないだけ。

でも
死ぬ間際の人間は面白い。
媚を売る者、今更生きようと必死に逃げもがく者、死ぬことを嬉しそうにする者

様々、色々、限られていない。
これだから見ていて飽きない。

これだから
人間は面白いんだ。