複雑・ファジー小説
- Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.14 )
- 日時: 2013/12/19 22:56
- 名前: 雛(元:桜 ◆N64vfsjfrs (ID: I/L1aYdT)
転校生
あれから少しして同じ制服を来た人達が教室に入ってき始めた。取り合えず僕は二人と別れ、教室から出て再び職員室に向かった。
永原と名乗った少年も自分の教室に戻ったようで西原さんは一人、少し寂しそうに僕達を見送っていた。
僕は無言で廊下に足音を響かせながら職員室に向かう。登校した生徒の視線が僕の方へ移される。
「ねぇねぇ、あの子誰?」
「さぁ……?」
こそこそと聞こえる話し声。まるで水紋が出来、揺れ動くように噂が広がりざわめきが起こる。
正直言って不協和音だ。話すなら堂々と話せば良いものを。僕は心の内で溜め息を付きながらも足を止めることなく目的地へ向かう。
「ぁ、お疲れ様」
職員室前に着くと優しそうな男の人が僕に気づいて挨拶をした。黒髪に黒い瞳に整った顔立ち、まさに女子の理想の“イケメン教師”だろうか。
「……どうかした?」
無意識に目の前の男の人を凝視していたのだがそれを不思議がられ慌てていいえ、と返した。
「そっか……ぁ、僕は君のクラスの担任の倉田です。よろしくね」
彼は名乗り、首にかかっているネームプレートを見せてくれた。
「はい、よろしくお願いします……」
僕が御辞儀をして言うと先生は微笑み、歩き出した。倉田先生の後ろを迷子にならないようについていく。
周りでこそこそと話す生徒は、もう居ない。廊下はまた静寂を取り戻した。
静かな廊下を一人の男と一人の少女が歩いている。
男は優しそうな整った顔立ちでスーツを着込んでいる。少女の方は黒いコートを羽織りフードで顔を隠して歩いている。
静かな廊下に二人分の足音が谺していた。
少しして男がとある教室のドアの前で足を止める。
「じゃあ呼んだら入ってきてね?」
「はい……」
男はドアを開け、教室に入っていく。
____深淵さん、入ってきてください____
数分後、少女の名前が呼ばれた。
「はい……」
彼女は小さく返事をし、ドアに触れる。ゆっくりドアを開け、教室に足を踏み入れた。
* * *
「ぁ、西原さん」
僕は教室に入ると真っ先目についた友達の名前を呼ぶ。
「ぁ、宮野さん……」
西原さんは此方を向いて僕の名前を言った。彼女は僕の友達で僕が唯一深く関わっている人だ。
僕は日常や“普通”には興味がない。だって面白くないじゃないか。
何時もとは違う特殊なモノに、僕は興味を持つ。彼女もその“特殊なモノ”の一人。
でも特殊だから関わっているんじゃない。可愛いとか下心からでもない……と思う。
「ぁ、そう言えば今日転校生来るみたいだね」
さっき廊下で聞こえた世間話で知った。
「その人ならさっき会いましたよ?」
「えぇっ! 嘘! 良いなー」
僕が昨日あった人が転校生なら、良いんだけど。
「おーい、席につけー」
僕達が話していると先生が教室に入ってきた。ドアの隙間から少しだけ見えた黒い影に興味を持ちながらも急いで自分の席に座る。
「ぇー、今日は転校生が来ています」
先生がたったその一言を言った途端、教室がざわめきだした。
「センセー! 女ですか? 男ですか?」
「どんなひとですかー!」
クラスの人達が口々と質問を投げ掛ける。
「女子ですよー……どんな人……? 不思議な人ですし可愛いと思いますよ?」
女子と聞いて歓喜の雄叫びをあげる男子、可愛いと聞いて期待する女子。
先生もてんやわんやで苦笑いで質疑応答をしている。
「はい、質問は一旦終了!」
これじゃ拉致があかない、と思っていると先生が皆を沈めた。
「深淵さん、入ってきてください」
先生がドアに向かって言った。
ドアがゆっくり動き、開く。黒い影が教室の中に姿を現した。