複雑・ファジー小説

Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.16 )
日時: 2013/12/20 20:09
名前: 雛(元:桜 ◆N64vfsjfrs (ID: I/L1aYdT)

 第四話「好戦者」
      ___面倒で面白い人 a___

僕は宮野と名乗った少年に昼食の誘いを受けた。屋上で食べるとのこと。今は西原さんと宮野さんの後ろを着いていっている。
序でに校内を少しだけ紹介してもらっている。階段を数回登り、灰色の扉の前まで来た。
「此処が屋上の入り口だよ」
宮野さんがそう言いながら扉を開ける。扉の先に見えたものは綺麗な地面と一面水色の空____と、少年。

「ぁ……やっぱり今日もいらっしゃいますね」
西原さんは扉を閉めながら少し苦笑い気味に言う。
西原さんの声と扉の開閉の音に反応したのかベンチに座っていた少年が此方を向く。少年の茶色の髪が風でなびき、赤茶色の瞳は僕の方を向いていた。
「ぉ、知らねぇ顔があるなー」
「今日は先輩。彼女は僕達のクラスに来た転校生です」
宮野さんが彼に僕を紹介した。彼は三年生なのか……。
「ふーん……」
僕が無言で彼を見詰めていると少年はその場から消えた___訳ではなくいつの間にか僕の背後に移動していた。
「……!」
僕が振り向く時、彼の手には銀色の何かが握られていた。
それは太陽の光を反射させ眩しく光る。その先端は鋭く尖っていて凶器のようだった。
いや、“凶器のよう”ではなく“凶器”だった。
瞬時に身を構え後ろに下がる。少年の後ろに居た西原さんは呆れと驚きの表情を、横に居た宮野さんは心配そうな表情をしていた。
「……中々見込みが有りそうな奴だな」
彼は口角を上げて笑い言った。彼の手にあったものは鋏だった。
「……それ、今必要ですか?」
僕は数歩後ろに下がり冷静に質問している、つもり。
「さっきまで使ってたからそのまま持って来ちゃったんだよ」
星マークが付く程の勢いで言う彼。にこにこと笑っている。デジャヴ___同じようなモノを昨日見た気がする。
僕はそんなことを考えながらも彼との会話を繋げる。
「そんなに危ないものを振り回さないで頂きたいです……」
来る___
僕は言葉を言い終わると腰から小刀を出した。刹那、光輝く鋭利なモノと少年の姿が目に入る。僕は小刀を構え振り下ろされたそれを小刀で受け止めた。
「……!?」
「ぇ……!?」
ほんの少しの隙間から見える西原さんと宮野さんは、目を見開き迚驚いていた。
「へぇ……やるじゃねぇか……」
少年はまた口角を上げ、嬉しそうにそう呟いた。

西原さんと宮野さんは此処にいては危険だと判断したのか少しして屋上から去っていった。
友達を見捨てるのか___なんて思わない。寧ろ僕はその方が好都合だった。

「……手加減は要りませんよ」
僕はそう言い、鋏を振り払いバックステップで後ろに下がった。