複雑・ファジー小説

Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.18 )
日時: 2013/12/23 23:33
名前: 雛(元:桜 ◆Uu32iDB2vY (ID: I/L1aYdT)

      一人の人外と四人の人間

「深淵さん! 大丈夫?」
慌てて黒髪の少年と少女が屋上に来る。屋上には茶髪の少年と黒いコートを着た少女が居る。
「はい。大丈夫ですよ……」
深淵と呼ばれたコートの少女は完全に戦闘体勢を崩した。茶髪の少年は持っていた鋏をしまう。
「凄いですね……五戯さんと戦って傷一つ無いなんて……」
黒髪の少女はそう言うと懐から弁当を出す。
「そろそろ昼食にしませんか?」
そう少女が問ったのと同時に屋上の扉が開き、もう一人茶髪の少年が入って来た。

屋上で五人の学生がベンチに座って弁当を食べている。
「宮野さんの美味しそうですね……」
黒いコートの少女は黒髪の少年の弁当を見て言い、自分の弁当を食べる。
「本当ですね……。ぁ、あの……貰っても宜しいですか?」
黒髪の少女は黒髪の少年の弁当を見て言うとねだった。
「そ、そうかな……? 」
その黒髪の少年はコートを着た少女と黒髪の少女との三人で会話する。
「…………」
茶髪に茶色い瞳の少年は同じく茶髪に赤茶色の瞳の少年の方を若干嫌そうに見ている。
「ぉ! 御前のも美味しそうだな!」
その茶髪に赤茶色の瞳の少年はコートを着た少女の弁当を見て勝手におかずを取っていく。

日常的な何でもない穏やかな時間が過ぎる。けれどこれは皆、黒いコートを着た少女が居るから出来ている時間。
この五人は
其々得意なコトを持っている。

中でも一番雰囲気が違うのは
黒いコートを着た少女で、
ソレを取り囲む四人も
また違った雰囲気を出していた。

この五人組に近づく者はこの学校には居ない。
けれど彼等と同じく得意なコトを持っている者なら
五人と関わり合い
“彼女”の運命を変えるかもしれない。
「……………」


屋上には四人の人間と一人の人外? が居た。
「……凄い光景だな」
一人の黒い影が言う。彼は屋上の扉の少しの隙間からそれらを見ている。
「だねー……。つかあの子可愛くないっ?」
もう一つの黒い影は缶珈琲を片手に彼の背中に乗って一人の人物を見ている。
「顔見えないけどかなりの美脚ね……肌も白いし」
二つの黒い影の後ろに居るもう一つの黒い影は横から覗きながら言う。
三つの影は、六つの瞳は屋上に居る一人の人物を捉えていた。
五人の内、黒いコートを着ている少女のコートからはみ出て微かに見える肌は白く、異様に綺麗だった。


「…………」
少女は何かを察知して扉の方に目を移した。
「……どうかしましたか?」
黒髪の少女は突然視線を変えた彼女に問う。
「ぁ、いえ……何でも」

彼女以外は気づいていない。
扉から覗く三つの影を
これから関わり
更なる歪みへと導くこととなる者達の存在に。