複雑・ファジー小説

Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.2 )
日時: 2013/12/27 12:31
名前: 桜 ◆N64vfsjfrs (ID: I/L1aYdT)

      *___黒蝶と少女を見つけた___*


あれから僕はビルの屋上で人間達を眺め休憩した後、地に降りた。
その時、回りに居た蝶が地に着いた勢いで何処かに飛んでいってしまった。
ぁーぁ、黒蝶達、綺麗だったのに……。


「……今日も人多いな……」
通勤時間、僕は通学路を歩いていた。僕は至って普通な高校生。僕は人が行き交う中流れに逆らい歩こうとしても只ただ流されるだけだった。
何時もこうだ、この街は人が多い。だから人混みが発生して道は何時も鮨詰め状態になる。
初めて僕が此処に引っ越してきた時は驚いた。けれどもう日常の一つになっていた。それじゃあちっとも面白くない。
だから僕は最終手段として少なくとも日常の無さそうな路地裏を通って学校に行く。今日もそう、今日も日常がつまらないから路地裏に行った。

今日は期待していた非日常が訪れた。
黒い蝶が路地裏の道を飛んで居たのだ。
詳しくは知らないけれどこの街では黒蝶は珍しいらしい。そしてその蝶を連れている人は今では珍奇らしい。
と言うか居るかどうかも分からない、居ないとされている人らしい。

朝からそんな珍しいモノに、普通じゃないモノに出会えて僕は興奮した。
そして軽い足取りで路地裏を歩いた。嬉しくてつい前を見ずに、何かの歌であったように上を向いて歩いていた。
だから前から来ていた人に気づかずに
ぶつかってしまった。


「っ……」
散った黒蝶を見つけるため僕は路地裏を歩いていた。黒蝶を大人や警察に見つけられては蝶が殺されてしまう。僕のせいで綺麗な黒蝶が消されるのは癪に触る。だから僕は探した。
下を向いて歩いていたからか、前から来ていた少年とぶつかって尻餅をついてしまった。


「ご、ごめんなさいっ。大丈夫ですか?」
僕は慌ててぶつかって尻餅をついた人、恐らく女の子に謝った。黒いコートのフードを被ってるから顔が見えない。
「……大丈夫、です」
女の子が御尻を擦って言った。透き通った綺麗な声に僕は一瞬頬を紅潮させてしまった。
「ぁ、怪我ない?」
女の子がさっき大丈夫だと言ったにも関わらず僕は聞いてしまった。
だって男は女の人を気遣わなきゃ駄目でしょ?
「はい、怪我、してません……」
女の子の途切れた台詞を僕は不思議に思った。まぁ走っていたら有り得ることか……。
「すみません、蝶を探していて……」
「そうなんだ……」
蝶をねぇ……。ん? 蝶? 蝶って……もしかしてさっき見た……。
「ぁ、あの、もしかして黒い蝶ですか?」
「……はい」
少し驚いたのか少し間が空いて返ってきた肯定。
「なら……其処に」
丁度タイミングよく側にあった白いコンクリートブロックに停まっていた黒い蝶を指す。
白いコンクリートブロックと黒い蝶、まさにコントラスト。
「……ありがとう、ございます」
女の子は黒蝶に近付き人指し指を伸ばして停まらせ、蝶を自分の許に持っていった。
「…………」
僕は直感した。
この子なら

僕に非日常を与えてくれる。

そんな気がした。