複雑・ファジー小説
- Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.21 )
- 日時: 2013/12/29 20:28
- 名前: 雛(元:桜 ◆Uu32iDB2vY (ID: I/L1aYdT)
§§___先輩と___§§
俺は帰宅後、制服を脱いで私服に着替え買い物序でに町を散歩している。
何時も不良を負かしている俺だが別に噂になってないし恐がられている訳でもないため普通にこうして街を歩いている。
こうしているもたまに知り合いと会うだけでばったり先輩と会ったりなんかしな……くもなかった。
「先輩……?」
俺は賑やかな某メイド喫茶の近くの路地裏で自分の先輩を見つけた。
そして今日会ったばかりの知り合いも居た。
「? あぁ、奏か」
深緑の髪が揺れ、灰色の瞳が此方を向いた。彼は俺の先輩で俺が通ってる高校の卒業生だ。
俺が戦って勝てなかった数少ない人物の内の一人でもある。そんな先輩の隣には今日俺の学校に転校してきた少女が居た。
何時もは黒いコートを着てフードを被っているが今は違う。何でか知らないがメイド服を着ていた。
艶やかな黒髪に光を受け入れない紅い瞳、何時もは隠れている容姿を見るのは初めてでつい見入ってしまった。
「あ……五戯さん……」
俺は彼女の声で我に帰ると二人に近づいた。
「何してるんっスか?」
「あー、別に? あの馬鹿二人が勝手にこいつ連れて来てよ、今休憩させてただけだ」
「へー……」
視線を先輩から転校生、深淵今宵の方へ移す。メイド服を着させられたのが嫌だったのか彼奴は此方を軽く睨んでくる。まぁ深淵なら普段こんな派手な格好はしないだろうしな。
「……何ですか?」
「別に、やっぱそういうの着んの嫌か?」
「いいえ……好きと言えば嘘になりますが嫌いではありません」
俺が思ったことを問うと意外な言葉が返ってきた。嫌だから睨んでるんじゃなかったのか。
「ただ、恥ずかしいんです」
ああ、見られるのが嫌だから睨んでたのか。俺は其処でやっと納得した。
「意外だなー……嫌いかと思ったぜ、そういう服」
「着替えたかったら着替えれば良いぞ。元々来てた服は車にあるし馬鳥羽は買い物にでも行かせるから」
先輩は深淵の頭を撫でて言う。
先輩の言った馬鳥羽とは先輩達の乗ってる車の運転手だ。車の持ち主であり自身の車に過剰な愛情を注いでるある意味変な奴。
「分かりました、ありがとうございます」
深淵は頷くと車の中へ消えた。それに入れ違うように運転席から男が降りてきた。
黒髪に緑の瞳のその男はさっき言った車の運転手、馬鳥羽謙介。因みに先輩の名前である境介と似ているので間違え易い。
「で……彼奴は一体何者なんだ……?」
先輩が真剣な顔で俺に問う。馬鳥羽はパシられて買い物に行っていて路地裏には俺と先輩しか居ない。
「さぁー? 今日会ったばっかなんで詳しくは知らないっスけど……かなり強いと思いますよ」
俺は頭を掻きながら言う。その答えを聞き、先輩は眉を寄せた。
「やっぱり戦ったのか……」
先輩が溜め息をつきながら言う。別に戦ったって良いじゃねぇか、結局彼奴も強かったんだし死人も出なかったし。
「悪いっスかー?」
「いや……。なぁ、彼奴の回りに蝶飛んでなかったか?」
「は? 蝶……? 飛んでなかったと思いますけど……」
「そうか……」
何なんだ? 蝶? 蝶が回りに飛んでたら何かあったのか?
蝶で思い当たるっていやぁ……あの呪われた人外の……ま、違うか。
「……どうかしましたか?」
「うぉっ!?」
真後ろから声がかかった。いつの間にか深淵が俺の後ろに居た。
「あ……すみません。大丈夫ですか?」
「お、おう……」
にしてもいつの間に来たんだ? 俺は不思議に思いながらもそう言った。
「着替え終わったのか?」
「はい。ありがとうございました……」
「ん、これからどうする? どうせ彼奴等まだ終わらねぇだろうし……先帰るか?」
「あの……街を案内して下さいませんか? 友達に案内してもらうつもりだったんですけどはぐれてしまって……」
どうりであの人達に連れていかれた訳か。あのテンション高い二人なら迷子とか関係無く連れてくるもんな……。
「そうか……後々迷ったら大変だしそうしたほうが良いな……。時間もあるし良いぞ」
「ありがとうございます……」
「奏、お前はどうする?」
不意に問われた。俺は別にこの後何もすることは無いが先輩の迷惑になるだろうから……
「あー、俺はいいっスよ。用事あるんで」
嘘の口実をついた。正直先輩に嘘をつくのは気が引けたがまあ良いか。
「そうか、ならまた今度な」
「それではまた明日……」
先輩と深淵は別れの挨拶をすると車の中に消えた。
エンジン音が聞こえた、少しすると黒い車はもう見えなくなった。
「蝶か……」
蝶を回りに纏う人外、人間を殺せる力を持った、化け物。
もし深淵が人外で、危険で恐ろしい何かなら……俺や先輩は彼奴と戦うことになるのか……。
「だとしたら……全力で向かわなきゃな」
じゃねぇと勝てねぇし
俺の方が殺される。
俺はこれから起こることに期待し、家路についた。