複雑・ファジー小説

Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.4 )
日時: 2013/12/04 22:51
名前: 桜 ◆N64vfsjfrs (ID: I/L1aYdT)

 第二話「影の傍観者」
      ___危険な人……?___


僕はただ一人、路地裏を歩いていた。夜に比べればまだ明るい方だが決して安全とは言えない人気の少ない場所。
まるで夜の静寂が訪れたような無音の空間。そんな場所に僕は足音を響かせる。
「……何の御用、でしょうか……?」
一度足を止め、僕は振り向かずにただ目の前の風景に向かって言う。


「あらら、やっぱりばれちゃってたか」
路地裏の物陰から一人の男が現れる。黒髪に紅い瞳、黒いファーコートを着た男。見た目的に二十代前半か半ば程。
「何時から気づいてたの?」
男はヘらへらと笑って少女に問う。
「……自分で、考えてください」
少女は静かにそういうと止めていた足をまた動かした。


「冷たいな〜……まぁ良いや。ところでさ、君の情報が全く無いんだけど……どうしてかな?」
さっき現れた人物は始終笑って僕に質問を投げ掛ける。声の低さからして男だろうか。
僕は此処で初めてその人の方へ向いた。

___眉目秀麗___

まさにその言葉が当てはまるだろう。
僕は男の人には興味は無いし恋愛もするつもりは微塵もない。けど彼は僕から見ればイケメンだった。
けれど何処か違う、異様なオーラを放っていた。
彼は口角を上げて笑っている……ずっと。
正直言って気持ち悪いな……。
「ん? 何か今変なこと考えなかった?」
「別に……」
只の変な人かと思ったら意外に鋭いな……。この人がこの街で有名な情報屋なのか……?

「まぁそんなことは置いといて。君のコト、教えてよ」
爽快なスマイルで言う彼。恐らくコレで何人もの標的(女性に限る)を落としてきたんだろうなー……。
「嫌です。キミに教えることは、有りません」
「っははは! 年上にキミは失礼だな〜」
急に笑う男。確かに年上は敬うものかもしれないけど……この人は別。

「他の人に聞いてください」
危険、危険危険危険危険危険___
僕の中で警告のブザーがなり響く。
この人と居てはいけない。
この人と関わってはいけない。
僕の本能がそう訴えている。

僕は踵を返し全力疾走でその場を去った。