複雑・ファジー小説
- Re: 黒蝶の鱗粉 ( No.7 )
- 日時: 2013/12/27 12:40
- 名前: 桜 ◆N64vfsjfrs (ID: I/L1aYdT)
第三話「大人しい少女とナンパ少年」
___彼女は案内人___
____朝、雀や鶏の鳴き声が聞こえる。体を起こし、ベッドから降りる。眠い、目を擦り顔を洗うため洗面所へ歩いていく。
僕はあのメールを貰った後、学校に行く準備をして直ぐに寝た。
正直学校がどういうところなのか分からない。親は小さい頃に亡くなり、それから人間に拾われ孤児院に入れさせられたが脱走してきた。
つまらなかったからだ。
だから僕は保育園も幼稚園も児童館も学校も何も知らない。人間の集まる場所と言うことだけは分かる。
どんな所か分からない限り武器は所持しておく。勿論見つからないように。
顔を洗い終え、朝食を作る。今の時刻は午前7時10分、学校までは然程遠くはないので間に合うだろう。僕はゆっくり朝食を取る。
鮭と味噌汁と御飯、今朝は和食を食べた。
朝食後、パジャマを脱いで制服に着替え、鞄を持って玄関を出た。
何時もと着ている服が違うので少し新鮮な感じがする。
僕は一度深呼吸をしてから足を進めた。
____学校前
今日は昨日の少年には会わなかった。
まぁ別に会わなくても何も支障は無いが、この学校のことはよく知らないので案内してもらいたかった、もし会っていたら。
仕方なく一人で行くことにした僕は校門を抜ける。早く来たのかあまり同じ制服を来た子供は見つからない。
最初の目的地は職員室、職員室で僕の行くクラスの担任に会わなければならない。僕は勘で、広い校内を歩き始めた。
「……ちょっと早く着いちゃったかな……」
今日は日直に当たってきたので私は何時もより早く家を出た。けれど早すぎたのか生徒達はあまり見つからなく、朝の静けさが残っていた。
これはこの学校の日常の一つ、私は気にせず教室に向かって歩き出した。
暫く歩いていると見慣れない女の子が一人廊下に突っ立っていた。
その子は迷子のように辺りをキョロキョロと見回していた。
「……転校生?」
そう言えば今日来るって昨日先生が行っていたような気がする……。
私は何となくあの子が普通の子じゃないと思った。そして同時に、彼女と関わりたいと言う衝動が私の中に芽生えた。けど話し掛けにくい、初対面な上にいきなり話しかけたら戸惑うんじゃないかな……。
私の迷いに反して気づけば彼女の許へ駆けて行っていた。
「ぁ、あの……」
勇気を出して声を振り絞り言う。彼女は私の小さな小さな声に反応して振り向いた。
正直驚いた、私の弱く小さな声に気づいて振り向いてくれる人はあまり居なかった。この子となら、仲良くなれるんじゃないか、不覚にもそう思ってしまった。
彼女のことを、何も知らずに。
「貴女は……?」
女の子は口を開きそう問った。そりゃそうだよね……。
「ぁ、えと……私、2年3組の西原暗菜です……」
「西原さんですか……。ところで私に何か御用ですか?」
「いぇ、その、えっと……」
迷子みたいだったから、なんて言ったら失礼だよね……。
「あの、もし御用事がなければ職員室まで案内していただけませんか……?」
私が何と返そうか迷っていると彼女が言った。やっぱり迷子だったのかな。
「ぁ、はい。良いですよ」
私は迷いなく答えた。
「ありがとうございます」
こうして私は彼女と一緒に職員室へ向かい歩いて行った。
「此処ですね」
僕は知らない少女に声を掛けられ、彼女に案内を頼んだ。少しして職員室に着いた。思ったより近く、僕は同じところをグルグルと回っていたよう、それじゃ着かないわけだ。
「ありがとうございました」
僕は御礼を言い頭を下げる。別に僕は人間を特別嫌ってはいないので頭を下げるのは嫌ではない。好きだと言うわけでもないけれど。
「いえいえ……ぇと、また何かあれば頼ってくださいねっ?」
「はい」
彼女は戸惑いながらもそう言い、僕は肯定する。
「……将来良いガイドさんになれるかもしれませんね」
僕は冗談めかしにそう言うと再度一礼して職員室に入っていく。
僕の冗談を本気にしたのか少女が嬉しそうに照れながら楽しそうに歩いていった。
「……また、頼ってさしあげますよ」