複雑・ファジー小説

index.1 ( No.11 )
日時: 2014/01/27 21:30
名前: nami (ID: isn12P1b)

 黄瀬は見張りの途中、美穂から電話を受けた。

「ノアさんで合ってますか?」
 こうして美穂が連絡してくることは珍しい。
「ミホさん。どうかしましたか? まさか、外山になにか……」
「今のところ順調です。ただ——この建物は、実に興味深い構造をしていると思いませんか?」

黄瀬はあたりを見渡す。
 螺旋階段。その内側にコンクリの筒のような壁。
 確かに変わってはいるのかもしれない。

「なぜエレベーターの外側に螺旋階段があるのでしょう。景観の面だとすれば内側を塗装で固める理由が見当たらない。最上階の五十階までこれが続くとなれば、相当な体積になるだろう。……なにかあるとしか思えない」
 最後は自分に語るように、美穂は呟いた。

 つまり、それは中に何かが隠されているということで————

「————ハルさんっ……!」

 急に美穂が大声を上げた。

「カメラの通信が、切れた……ようです」


 切羽詰まった美穂の声を聞く前に、黄瀬はもう走り出していた。