複雑・ファジー小説

◆index.1  special警察秘密部隊◆  ( No.4 )
日時: 2013/12/23 15:58
名前: 栞 (ID: hap96gvm)

「ヒドイよね、ハル。あたしに対する仕打ち」
 可愛らしく頬を膨らませて見せたのが、向井桜(むかい さくら)、十一歳の少女。
「電話中に騒ぐな、馬鹿。当然の注意をしたまでだ」
 そう受けたのが外山馳遥(とやま ちはる)、こちらは十五歳、男子中学生。
 三年間使って薄汚れたブレザー姿。

「だからって殴る必要はないでしょ!?」
「殴ってない。すこぶる殴りたかったけど殴ってない。軽くはたいただけだ感謝しろ」
「どちらにしろ暴力振るわれて感謝とか……! すっごく痛かったんだから!」
「おやおやそんなに体が弱くて“最年少の最強少女”って肩書きは務まるのか?」
「う゛……」

 相変わらずのコミカルなやり取りはもう二年目。ハルこと外山が勝つのも変わらない。
 田中美穂(たなか みほ)は苦笑交じりの傍観席。

「元気ですねー。流石、学生は若いですねー」
 そう言う美穂は二十一歳。
 成人したての女性だが、確かに体力は更年期に差し掛かったオバサンくらいだろう。
 最上級の運動オンチ。
 
「そ、そんな、ミホさんだってやっとお酒が飲めるようになったぐらいの……」
 外山は恥ずかしかったのか赤面しながらブツブツ呟く。

「でも私はそんなにエネルギーがありませんよ。コミュ症卒業したての元引きこもりですし。何しろ誇れるのはココぐらいのもんですから」
 そう言って美穂はトントン、と自分の頭を叩いた。
 明晰なその頭脳は、“special警察秘密部隊”が誇るもの。
 しかも引きこもりで学校に通っていないのだからすごい。
 人と話すのが苦手だったらしく、かなり年下の桜や外山にも敬語を使うくらいだ。


「あ、そういえばさっきの電話の内容は」
 外山が思い出したように言い、
 桜も、
「あ、あたしが暴力された訳を聞かせて頂かないといけないね!」
 と賛同(?)した。


「ちょっと待って。もう一人来るから」


 言われてみれば、さっきの桜のものとはうってかわって律動的な靴音が、廊下からこちらに向かってくる。