複雑・ファジー小説
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.11 )
- 日時: 2014/02/25 18:44
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第九話
「やっと終わった」
夜8時も過ぎた頃、一条は八咫烏の支部から出てきて伸びをし、帰路についた。
事情聴取と言われてもただ起きたことを話しだけだったので時間はかからなかったが、ここまで時間がかかった理由は本当に適格者になったのか調べるための検査に時間がかかり、この時間となった。
(刀は返してもらえなかったな。まぁ俺のでもないけど)
新魔武装の刀は調査と登録という名目で回収されたままだった。
不意に体に意識を張り巡らせると魔素が体中に巡っているのが分かる。
「俺も適格者なんだなぁ。実感は湧かないけど」
街の中心部から少し離れたところにある実家の剣術道場に着いた。
「ただいま……ん? お客さんが来てるのか。珍しいな」
玄関には家族の靴の他に見たことがない革靴が一足置いてあった。
「誰かお客さん来てるの?」
居間に入ると父がスーツを着た男に酒や料理を進めていた。
「おぉ、帰ったか! 暁」
父___一条 正義が上機嫌で迎えた。
「その人は父さんの知り合い?」
「いや、今日初めて会ったが?」
……じゃあ、なんでそんな人と数年ぶり会った友人のように接してるんだよ。
「君が一条 暁君かな?」
スーツ姿の男が柔和な笑みを浮かべながら話しかけてきた。
「そうですが、あなたは?」
「これは失礼。私は国立聖桜学院戦術学担当教諭の大田 晴信です」
名刺を差し出してきた。
国立聖桜学院
日本が適格者の能力向上などの目的で創設した国立校。実際は士官学校と大差なく、この学校を卒業して軍に入隊すると下士官から始められる。
「聖桜学院の方がどうなさいました?」
「いえ、入学案内と手続きの書類をお持ちしましたので、この編入手続きと誓約書にサインを」
自分の隣に置いてあった鞄から書類一式を出した。
「あの……聖桜学院って入学は自己意思のはずでは?」
実際、適格者である雪は俺が行かないからという理由で蹴っている。
「原則はそうですが、あなたは新魔武装の使い手となったので強制的に編入ということになります」
「ちなみに拒否するとなにかありますか?」
「軍の特殊部隊に拘束されるます」
「…………」
絶句していると父さんが背中をバンバン叩きながら
「いいじゃねーか編入したら、お前の剣術だって活かせるし俺の道場の名前も上がるだろ」
(……道場の名前上がれば門下生も増え、父さんと母さんの暮らしも安定するな)
「でも、悪性霊体を倒した暁君の実力ならウチでも通じると思うよ」
「……分かりました。俺は聖桜学院に編入します」
意志を固めて編入書類にサインをした。