複雑・ファジー小説
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.13 )
- 日時: 2014/02/25 18:46
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第一話
「ここが聖桜学院か」
大田が来てから3日経ち、一条は入学案内に添付されていた地図を片手に聖桜学院にやってきた。
「すみません。ここは関係者以外は立ち入り禁止です」
正門付近まで近づくと屈強そうなガードマンが道を阻んだ。
「編入生の一条 暁です」
「あぁ、君が。えっと、学生証を提示してくれるかな?」
「これでいいですか?」
聖桜学院の学生証はPDA(携帯情報端末)の形式を採用しており、身分証明だけではなく、無線やGPS、さらにはネットに接続なども出来る優れものだ。
「……はい、確認しました。楽しい学園生活を」
ニコリと微笑んで道を開けてくれた。
正門を潜り、校舎に向けて歩くと少し離れたところに腰に刀を提げた一人の少女が立っていた。
赤茶色の髪をポニーテールにし、身長は女子にしたら高めだ。顔立ちは穏やかでかなりの美少女だ。
(うわぁ……美人だなぁ)
一回は会話をしてみたいと思うが俺じゃ無理だろうなと思いながらその横を通り過ぎようとしたとき
「君が一条 暁君か?」
「……え? そ、そうですが」
「良かった。入れ違いにならずに済んだよ」
「ど、どうして俺の名前を?」
一条は上擦った声にならないよう気をつけながら疑問をぶつけた。
「私は生徒会長の藤堂 ユカリだ。学院長から君を案内するように言われていてね、悪いがついて来てもらえないか?」
「わ、分かりました」
素直に後を追う。
「ようこそ聖桜学院へ。私は学院長の天谷 希だ」
ユカリに案内されたのは新校舎の最上階にある学院長室。
その部屋の中には妙齢の美女が腕と脚を組んで座っていた。
「あ、あなたが学院長、ですか?」
「そうだが、【若いな】って思ったのか? こう見えても私は38だ」
「さんじゅうはち!?」
どれだけ老けて見ても二十代中頃にしか見えないのでかなりの驚いていた。
「君は何歳に見えたんだ?」
「二十代中頃かと……」
「ハハハッ、それはちょっと盛りすぎじゃないかい?」
天谷が一頻り笑ったあと真面目な顔をして。
「君を呼んだのはこれの件について言うことがあるからだ」
机の下からアタッシュケースを取り出し中身を開ける。その中には悪性霊体を倒したときに使った刀が一振納められていた。
「この刀を研究所で調査してみたんだが、刀を鞘から引き抜くことすら出来なかった」
天谷がアタッシュケースから刀を取り出し、鞘から抜こうとするが一向に抜けない。
「一回抜いてみてくれ」
天谷から刀を手渡され、一条は刀を鞘から引き抜くと普通に鞘から抜けた。
「どういうわけか、その新魔武装は君しか使えないんだ。だからその刀は正式に君のものだ」
「本当ですか!」
一条の頬が笑みで緩む。
「あぁ、本当だ。ただし無闇に使うなよ。その刀は出処も何の神器を使用しているのかも分からない曰く付きの代物だからな。用件は以上だ、藤堂にこの後のことは伝えてあるからその指示に従ってくれ」
「分かりました。それでは失礼します」
刀を鞘に納め、腰に提げると頭を下げてから部屋から退出した。
「出処不明の刀。もしかするとアレは世界を変えるかもしれんな」
一条が退出したあと天谷は窓の外に見える一条を見ながら小さく呟いた。