複雑・ファジー小説
- Re: 幻想のツァオベライ ( No.5 )
- 日時: 2014/02/25 18:26
- 名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)
第三話
「雪、急げ!」
雪の手を引いて一心不乱に地下シェルター直通エレベーターを目指す。
地下シェルターは50m下に埋められており、直通エレベーターで向かうしかない
今は一階を走っているから、もうすぐ着くはずだ。
「悪性霊体って全滅したんじゃないの?」
EU軍の「戦姫の咆哮」作戦以降、悪性霊体の姿が確認されていなかったためその際に悪性霊体は殲滅されとされた。
「そのはずだが、今はそんなこと言ってる暇は」
「! お兄ちゃん下がって!」
雪が思いっきり俺の手を引っ張った。
「雪? なにを……」
立ち止まった瞬間、自分の目の前の廊下がゴッソリと抉れるように陥没した。雪が止めてくれなかったら、そのまま落ちてあの世行きだっただろう。
陥没した廊下から現れたのは2mぐらいの大きさの人とも獣ともとれる醜悪な容姿をした怪物だった。
「悪性、霊体……」
ギョロリと大きな目をこちらに向けると口を大きく開け、こちらに向かってきた。
「逃げるぞ!」
雪を抱き上げ、霊魔体法の中でも脚部を向上させる【疾】を使い、来た道を駆け抜けた。
「お兄ちゃん、追いつかれる!」
巨体に似合わず、俊敏な動きで徐々に差を詰めてき、おもむろに鉤爪のついた大きな手を振りかぶってきた。
「くそったれ!」
大きくジャンプし避けるが、着地したところが脆く、大きく崩れた。
「きゃーーー!」
「大丈夫だ! 上手く着地する」
上を見ると悪性霊体が追ってきているのが分かる
「地面まで数メートル」
霊魔体法の全身の筋肉を硬くする【剛】を使い、衝突に備えた。
「つぅ……やっぱ、キツイな」
着地出来たが衝撃を直に受け、足がジンジンしていた。霊魔体法がなければ死んでいただろう。
「無理し過ぎたな」
ポケットから固体魔素を出すが、固体魔素を手に持つとサラサラと崩れ去った。
「お兄ちゃん、あっちに道がある!」
「あいつが来る前に急ぐか」
道なりに走っていった。