複雑・ファジー小説

Re: 幻想のツァオベライ ( No.8 )
日時: 2014/02/25 18:35
名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)

第六話
「雪ッ!」
悪性霊体の咆哮が聞こえ、その直後に雪の悲鳴が聞こえてきた。
「コッチだ化け物!」
体が勝手に動きだし、部屋の扉を開け放つと同時に飛び出るとそこら辺に落ちていた瓦礫を拾い上げ、悪性霊体に投げつけた。
「! グオォォォォォ」
瓦礫を投げつけられたことに怒った悪性霊体は見事に一条に狙いを変え、襲ってきた。
「よっと」
剣術を習っているおかげか悪性霊体の攻撃を見切り、余裕を持って避けていた。
何度も同じ事を続けていると、ついに悪性霊体が勢い余って壁に激突した。
「雪、逃げるぞ。立てるか?」
「う、うん」
雪がいる場所に走って向かい、雪に手を差し出し立たせた。
悪性霊体が激突の衝撃から立ち直り、怒りの形相でこちらを向いてきた。
「雪、走れ! 」
雪を破壊された出入り口の方に押し出し、自分は悪性霊体の方に走っていった。
こうすれば少しぐらい時間を稼げるだろう。そうすれば雪を逃がすだけの時間は手に入る。決死の覚悟だった
「お兄ちゃん!」
だが一条の目論見とはまったく異なり雪は出入り口ではなく一条を追ってきた。
「バカ! 戻れ!」
悪性霊体が一条ではなく雪に襲いかかった。
「きゃぁーー!」
「くそっ! 間に合え!」
雪を押しのけ悪性霊体の攻撃をモロに受けた。
「かはっ!」
悪性霊体の攻撃をモロに受けた一条は紙細工のように吹っ飛んで壁に激突した。
「けっこ、う……痛てぇ、な」
幸いにして【剛】の効果がまだ残っていたようで骨は折れていないが、衝撃が強すぎて少しの間は動けそうにない。
「お兄ちゃん! 大丈夫? 大丈夫だよね?」
雪が駆け寄ってきて、傷の手当てをしようとお札を出そうとしていたが、すぐ背後には悪性霊体が迫っていた。
「雪……逃げ、ろ」
「嫌! お兄ちゃんを見捨てるぐらいなら一緒に死ぬ!」
雪が抱きついてきた。
ちくしょう、このまま死ぬのか? こんなとこで死ぬのか?
不意に手に硬いものが当たる。目線だけその物体に送るとそれは封印されていた新魔武装だった。さっき壁に激突したときの衝撃でこっちまで飛んできたらしい。
(これを、使えば……)
新魔武装に手を伸ばそうとするが
(だけど、それだと雪との約束を破ることになる)
チラリと雪の方に目をやると必死に俺の体に抱きついて、震えを抑えていた
(このままだと雪も死ぬ。俺だけならいいが、雪も道連れなんて、俺が許さない)
「……お兄ちゃん?」
一条の意を決したような顔に若干違和感を感じているようだ。
すまんな、雪。俺は約束破ることになる
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
新魔武装を手に取った。その瞬間身体の中の神経を一本一本丁寧に焼かれるような激しい痛みが体中を駆け巡った。