複雑・ファジー小説

Re: 幻想のツァオベライ ( No.9 )
日時: 2014/02/25 18:41
名前: 将軍 (ID: RwTi/h2m)

第七話
「お…………ちゃ………。おに……ちゃん。…お兄ちゃん!」
ふらつく頭をゆっくりと持ち上げながら辺りを見回した。
自分の胸元には雪が泣きながらしがみついていた。
「お兄ちゃんが、死んじゃう、かと……」
綺麗な顔をぐしゃぐしゃに歪めながら泣いていた。
「大丈夫だ。今蹴りをつける」
微笑みながら雪の頭を撫でてから悪性霊体の方を振り向くと、悪性霊体が怯えているのか若干逃げ腰であった。
「こいよ、この化け物野郎!」
新魔武装___刀を鞘から抜き、正面で構え、敵の初動を待った。
「グォォォォ!」
勢いをつけ、両手の鉤爪を振り下ろしたり振り上げたして攻撃してきたが
「甘いんだよ」
全ての攻撃を弾き、受け流し、時には回避することで擦りもせずに悪性霊体に肉薄した。
「グ、グォォォォ」
焦ってきたのかもうめちゃくちゃに鉤爪を振り回しているだけだった。
「一閃流 一之太刀 紫電」
右手首を大上段から斬るとそのまま勢いをつけながら一回転し左手を斬りあげた。
「グギャァァァァァァァ!」
悪性霊体は今までの咆哮とは違い、苦痛で歪んだ咆哮をあげた。
「終わりだよ」
刀に神経を集中させると刀身に纏わりつくように霊力が集まり、刀身が輝きだす。
「ッ!」
集まり出した霊力に怖気付いたのか恥も外聞もなく悪性霊体は背中を向けて逃げ出そうとした。
「これでも喰らえ!」
霊力を纏い、巨大化した刀を悪性霊体目掛けて振り下ろした。
悪性霊体は断末魔をあげる暇すらなく跡形もなく消滅した。
「やった……な」
刀身に纏わりついていた霊力が消え、通常状態に戻った刀を鞘に納めるとその場に倒れこんだ。それほど消耗したわけではないと思っていたがかなり消耗していたようだ。
「やったね! お兄ちゃん。でも……」
雪がふくれっ面になると頬を引っ張ってきた。
「雪さん……痛いです」
「お兄ちゃんが私との約束破るからでしょ?」
ニコニコしていた。
……うん、その笑顔、すっごく怖い。
だが、頬からすぐに手を離した。
「でも、助けてくれてありがとう。お兄ちゃん」
「あぁ、なんせ俺は雪のお兄ちゃんだから」
「ふふっ」
「ハハハッ」
どちらからともなく笑い出した。
「でも、どうしてお兄ちゃんが使えたの? 適格者じゃないのに」
「それは分からん」
腕を組み考えていると急に一条が真剣な表情になり
「雪、下がれ」
不意に立ち上がり、雪を自分の背後に立たせ、鞘に手を添えて出入り口を睨みつけていると武装した集団がなだれ込んできた。