複雑・ファジー小説
- Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.4 )
- 日時: 2013/12/20 20:30
- 名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)
第4話
‾‾‾‾‾‾
船内の椅子に優太は腰掛け、家族、有紀、元太、竜のことを考えていた。
皆は、突然何も言わずに去った自分を一体どう思っているのだろうか。
4年後、また同じように自分に接してくれるのだろうか。
優太は窓から見える海を見つめ、そんなことばかりを考える。
気付けば、日本列島は水平線から消えていた。船はかれこれ3時間以上、超能力専門学校クリスフォードのある島へと向かって進んでいる。
「ニャー」
「え?」
どこからともなく、真っ白な猫が現れ、優太の膝の上にひょいと飛び乗る。
猫は優太の膝の上で丸くなり、そのままスヤスヤと眠りにつく。
「なんだお前。もしかして、迷い込んだのか?」
猫に話しかけても、返事など返ってくるはずなどない。優太はもちろん承知していたが、話しかけることで多少は気持ちが和らぐ。
「馬鹿だな。……クリスフォードに仲間がいればいいけどな」
優太はそういうと、優しく猫の頭を撫でる。
そんな優太の姿を、甲板からジョンとライリーが見ていた。
「案外すんなり受け止めてくれたな」
「しかし、まだ16歳の少年だ。この運命は残酷すぎる」
「分かってるよ。でもまぁ、あのまま放置しておく方が残酷だ。クリスフォードに入学することは、彼にとっては色々と失うものもあるが、正しい選択だ」
「あぁ」
ライリーはジョンの首に手を回し、肩をパンパンと叩く。
「なんだよ。罪悪感でも感じてんのか?」
「別に。ただ、弟を思い出しただけだ」
ジョンのその言葉に、先ほどまで陽気な雰囲気だったライリーが真面目な顔つきになり、胸の前で腕を組んだ。
「西暦最後の事件……あんな酷いこと、これから先二度と起きやしねぇよ。あの事件で人類と超能力者はお互いに学んだ、戦争に何の意味もないことを」
「今でも理解できないんだ。弟は、一体どういう目的で世界政府に立ち向かい、どんな思いで死んでいったのか」
「……あんまり過去を背負うな。死んだ者が最期に何を考えていたかなんて、そいつ自身しか分からないんだ。お前がいくら考えても理解出来やしねぇよ。お前の悪い癖だぞ」
「何がだ?」
「弟が死んだこと、優太がクリスフォードに入学すること、全部お前のせいじゃねぇ。なのに、お前はまるで自分がそれを招き入れた当事者だと思い込んでいる。もっと、気楽に考えろ。考えまくっても、何も解決しねぇよ」
「……そうだな。ありがとう」
「じゃ!今度の飲みはそっちのおごりな!」
「……前言撤回だ。くたばれ」
***** ***** *****
「お〜い、着いたぞ。起きろ」
ライリーは椅子に横になって寝ている優太の頭を叩く。
「う〜ん…」
優太は目を覚まし、起きたばかりの重い体を起こす。外はすでに日が沈み、海の方は暗闇で全く見えない。
「着いたからさっさと降りろ。飯待ってんぞ」
「飯?」
「ニャー!!」
「のわっ!?」
優太が寝ていた椅子の下から、白い猫が飛び出し、勢いよく船の外に飛び出していった。
ライリーは猫の突然の飛び出しに驚き、前の椅子に腰を強打し呻く。
「あ、あの猫……」
「ははっ」
優太は、目の前にいる人物が超能力者であるとはとても思えなかった。
ライリーと共に船から出た優太は、周囲を見渡した。
今現在優太たちがいるところは、大きな白い灯台がポツンと立っているだけの船着場で、船着場の目の前はすぐに森林である。
森の中は道が整備されており、規則正しく街灯が並び、暗闇の中の森の道を照らしている。
「歩くぞ」
先に船を降りていたジョンはそういうと、森の道を歩き出す。
優太とライリーもジョンの後を続いて歩き始めた。
「にしても、こんなところにクリスフォードっていう超能力者の専門学校があるんですね」
「島の大きさは東京都とほぼ同じだ」
「……え?」
ライリーのその言葉に、優太は驚く。
初めは冗談だと思っていたが、2人の顔を見るとどうやら冗談ではないらしい。
「クリスフォードには主に日本の超能力者が通っている、てか大半がそうだ」
「友人はすぐにできるだろう。それに、行動は3人1組の班だからな」
「班?」
「そうだ。ちなみに優太、お前は俺の班だ」
ジョンのその言葉を聞き、優太は安心する。
「俺の方が良かったんじゃねぇの?」
ライリーが肘で優太を小突く。
「お前の班はもう3人いるだろう」
「つまんねぇんだよ。あいつら真面目で優秀すぎるから。少しは馬鹿を入れたいじゃねぇか」
「…馬鹿って、僕のことですか?」
「冗談だって、ロックウェルジョークだ」
ライリーは笑いながら、優太の頭をパンパン叩く。
ジョンは終始そんなライリーを無視して歩き続け、優太も軽く交わしながら、歩くこと10分。
森林を抜け、拓けた土地に出た。
優太の目の前に、「コ」の字型で5階建ての巨大な校舎が現れた。校舎の右横には体育館と思われる建物やプール、さらに左横には3階建ての団地を思わせる建物が建っている。
「ようこそ、クリスフォードへ。さっそく校舎へ…と言いたいところだが、今日は授業も終わってるから、今からお前やクリスフォード生が生活している寮に向かう」
ジョンはそういうと、校舎の左に並ぶ4つの建物の方へと歩き出す。
「手前から1年生、2年生、3年生、4年生の寮だ。生徒の人数は総勢約90人。各学年大体20人前後だ」
「男子も女子も寮は一緒なんですかー!!」
「……ライリー、なんでお前が質問する?」
「え?だって優太、気になるだろ?」
「い、いや俺は別に……」
「まぁ答えるとそうだな。理由としては、お互いの親睦を深めるためだ。もちろん、部屋やプライベートな部分は別だがな」
「だってよ!!」
ライリーの無駄なアクションを無視し、3人は一番手前に建つ1年生の寮に入り、そのまま廊下を歩く。
「1階には食堂、風呂場、洗濯機と乾燥機、自動販売機。2階が女子のフロア、3階が男子のフロアだ。屋上も開放してある」
ジョンの説明を受けながら、やがて3人は1階奥の食堂へと辿りつく。
優太は唾を飲み込み、一気に襲い掛かる緊張感に溺れないよう注意する。
「まぁ、気楽に自己紹介しろ。皆良い奴だから」
「は、はい」
「それじゃあ、開けるぞ」
ジョンはそういうと、食堂の扉を開けた。
***** ***** *****
食堂は長テーブルが並んだ大学の食堂を思わせる形となっており、食事は三食全てバイキング形式となっていた。
椅子に座っていた生徒たちは一斉に視線を優太たちに向け、食事の手を止める。
「はい注目。突然だが、今日からとある事情でクリスフォードに転入してきた神宮優太君だ」
ジョンの言葉を聞いた生徒たちがざわつき始めるが、突然、その中で一人の女の子が手を挙げながら立ち上がり、ジョンに質問した。
「ということは!!第2班に配属ですよね!!」
「そうだ、智花」
「やったー!!隼人!!これで私たちも大会出れるじゃん!!」
クリスフォード1年生の天条智花は、目の前に座っていた黒崎隼人の肩を持ってグワングワンと振る。
「わ、分かったから離せってば!!」
「じゃあ、優太。お前から自己紹介しろ」
ジョンにそう言われ、優太は1年生総勢20名が座っているテーブルの真ん中に立つ。
一度咳払いをし、チラリとジョンとライリーを見る。2人は、しっかりと優太を見ていた。
優太は深呼吸をして、自己紹介を始めた。
「初めまして、今日からクリスフォードに入学する神宮優太です。これから4年間、よろしくお願いします!!」
一瞬、食堂がシンとなる。
優太は失敗したと思ったが、直後、拍手が沸き上がった。
「よろしくな!!優太!!」
「優太君よろしく!!」
「一緒に頑張って行こうぜ!!」
「こっちの席来いよ!!」
優太は皆の温かい言葉に、感動のあまり涙を浮かべる。
その勢いで、空いている席に向かうとしたその時だった。
優太の肩をジョンが掴み、優太が空席に行こうとするのを止める。
「残念だが、優太君とのお話は後でだ」
「「「「「えぇぇぇぇーーーー!!!!!」」」」」
ブーイングが巻き起こり、優太も首を傾げてキョトンとしている。
ジョンは優太を連れて食堂を出ていく。
残ったライリーは全員の前に立ち、そのブーイングをなだめていた。
***** ***** *****
食堂を出て廊下に戻ったジョンに、優太は尋ねる。
「どうしたんですか?」
「どうしたんですか?じゃないよ。お前、今の自分の立場分かってるか?」
「もちろん。超能力者でしょ」
「お前の超能力は何だ」
「俺の超能力は………」
ジョンはため息を吐き、頭をボリボリと掻く。
「優太、今からお前の超能力が何なのかを確かめるためにある場所へと行く」
「ある場所?」
「そうだ。そこにある男がいるから、その男にお前の超能力を引き出してもらう」
ジョンはそういうと、優太を連れて寮を出る。
俺の超能力って……一体、何?
