複雑・ファジー小説

Re: アビリティワールド-Abilityworld- ( No.9 )
日時: 2013/12/24 14:07
名前: 遊太 (ID: 8fZYMRgY)

第8話
‾‾‾‾‾




これは、優太がクリスフォードに転入したある日の出来事である………────。




「あぁぁぁ!!バーナビー先生の体錬授業の後にエーベルハルド先生の基礎数学とか、地獄だマジで!!」
授業終わりの寮へと戻る道で、隼人は大声をあげながら鬱憤を晴らしている。
そんな姿を、後ろから優太、智花、天志郎、理、奈織が苦笑いを浮かべながら見ていた。
「隼人は実技以外の授業、ほとんど寝てるよね」
「でもさ、バーナビー先生の体錬も実技じゃん」
奈織がそういうと、隼人がクルリと振り向き、それを否定する。
「あんな暑苦しい授業、俺に合わねぇよ!!」
「まぁ確かに、バーナビー先生はちょっと暑苦しいね…」
「どこかの筋肉ダルマと似てるわ」

「それは誰のことだ、奈織」

奈織が後ろを振り向くと、そこには篤彦、照、悠たち第3班が立っていた。
「聞こえなかった?耳が筋肉で塞がってんじゃないの?」
「馬鹿言うな、俺は聴力Aだぞ」
奈織のふざけた言葉に対し、真面目に答える篤彦を見て、全員が爆笑する。
優太も爆笑するが、ふと、ある人物に目が入る。
190cmという高身長の照の後ろに隠れてるように立つ悠は、無表情でボォーッとしている感じである。
思えば、優太はクリスフォードに転入して2週間、悠が顔に感情を表すのをあまりみたことがない。
「馬鹿言ってないで飯食いに行くぞ、照、悠」
「はいはい」
「………」
第3班は優太たちより先に寮へと戻っていく。
すると、智花が悠を見ながら言う。
「優太君も気づいてると思うけど、悠ちゃん、いつも元気なさそうなんだよね」
「ただ無愛想なだけでしょ」
「奈織ちゃん、そんな言い方ないよ」
「奈織も似たようなもんだろ」
天志郎の言葉に、奈織が目を光らせる。
「なんか言った?天志郎」
「別に〜俺らも飯食いに行こうぜ〜」
天志郎は逃げるようにして、隼人とさっさと寮へと戻っていく。
奈織は天志郎の後ろ姿を睨みながら、「あの野郎」と呟く。
そんな奈織を、理がなだめる。
この日常ともいえる風景に、優太はいつの間にか慣れていた。
「私たちも行こう。午後の授業に遅れちゃう」
智花の言葉で、優太たちは寮へと戻って行った。


***** ***** *****


その日の夜


優太は自室のベッドに寝転がり、テレビを見つめていた。
しかし、別にテレビを見ているわけではない。ただ、テレビを点けないと静かすぎて不気味なのだ。
優太は天井を見つめ、自らの両手を挙げ、その手を見つめる。
共感能力……───触れた超能力者と感情を同調することで、その超能力者の超能力をコピーできる超能力、それが優太の力だ。
しかし、ここ2週間で隼人や他の生徒に触れてみるが、一切何も起きない。
やはり、精神の中で出会ったアダム・ベルの言う通り、感情を真似事で同調することはできないのだろうか。
優太がそんなことを悩んでいると、突然、部屋に大きなノックの音が鳴り響く。
優太は肩をビクッとさせ、ドアの方を振り向く。
「優太!!いるか!?」
声の主は、篤彦だった。
「いるよ」
「入っていいか?」
「いいよ」
ドアが開くと、そこには篤彦、照、龍太郎、天志郎、理、隼人が立っていた。
優太は首を傾げ、篤彦に尋ねる。
「どうしたの?」
「まぁまぁ、ちょっと部屋を借りるぜ」
篤彦がそういうと、6人はゾロゾロと優太の部屋の中に入ってくる。
優太は意味が分からず、またそのメンバーに嫌な予感を感じる。
特に、リーゼント頭の龍太郎は不気味な笑みを浮かべ、優太をジッと見つめる。
龍太郎は優太の両肩をガシッと掴み、顔を近づける。
「優太ちゃん、ちょっと手伝えや」
「は?」
その風貌だけでなく、口調もヤンキーのようである龍太郎の言葉の意味が、優太には分からなかった。
「龍太郎、とりあえず内容を話そう。いいよな、照」
「ま、まぁ……」
優太が照の顔を見ると、照はなぜか顔を赤らめ、ずっと顔を俯いている。
優太は意味が分からず、篤彦の話を聞くことにした。

「俺たち第3班は特別でな。全員、幼馴染なんだ。これは別にクリスフォードの計らいとかじゃなくて、偶然だ。で、小さい頃から俺、照、悠は一緒だった。で、まず結論を言うと、照は悠にずっと恋してる。だけど、告白できないんだ。悠、普段の学校生活であまり他の人と接しようとしないだろ?あいつ、小さい頃両親から虐待を受けててな、それ以来、俺と照以外の人とあまり関わらないようにしてるんだ、一種の対人恐怖症だな。で、照はもし告白して、断られたら今までのような付き合いができず、逆に悠を苦しめるかもしれないと思っている。だけどそれでも、照は悠に今の気持ちを伝えたいんだ。そこで、俺たちは結束して照の告白を成功させるため、とある作戦を実行しようと思っている。名付けて、照の告白大作戦だ!!」

篤彦の熱弁を聞いた優太は、首を傾げる。
「で、その作戦の内容は?」
「まだ決まっていません」
篤彦の代わりに理が答える。
「それで、なんで俺のところに来たの?」
優太が篤彦に聞く。
「お前、クリスフォードに来るまで高校いたんだろ?何か参考になることを知ってると思ってな」
「高校にはいたけど…入学してすぐにここに転入してきたから何も力には慣れないよ」
「ぐっ……」
篤彦は悔しがり、理の方を見る。
しかし、理は首を横に振る。
「待ってください。僕は恋愛事情には詳しくありません。それより、照君の意見を尊重した方がいいんではないですか?」
理の言葉で、全員が照の方を見る。
照は顔を真っ赤にした状態で、恥ずかしそうに答える。
「ま、まぁ………僕的には…何かプレゼントしたり……デートとか………」
「デートねぇ。この島にデートスポットなんてないだろ」
「夜景とかは?」
優太が何気なく呟いた一言に、篤彦と龍太郎が目を輝かせ、声を揃えて叫んだ。

「それだぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

2人のあまりにも大きな声に、全員は耳を塞ぐ。
「それにしよう!!島の中で誰にも邪魔されないような、夜景スポットを探そう!!」
「プレゼントはどうするよ?」
「オーソドックスだと花束とか」
「照なら、悠が好きそうなの知ってるんじゃないの?趣味とか」
優太の言葉に、照はしばらく悩み、何かを思いつく。
「そういえば悠、ヌイグルミをよく集めてたよね」
「ん?そういえばそうだな。あいつ、俺らがいないときはよくヌイグルミ抱えて、ヌイグルミに話しかけてたな」
「はぁ!?あの女が!?」
龍太郎が驚き、爆笑する。
「じゃあ、ヌイグルミをプレゼントすればいいんじゃない?」
「そうしよう。優太、やっぱりお前を頼って正解だった」
篤彦がそのゴツイ手で優太の肩をバンバンと叩く。
「痛いよ…ところで、このメンバーはどうやって選んだの?」
優太は部屋の中にいるメンバーを見て、篤彦に尋ねる。
「恋愛に詳しそうなやつ、口が堅そうなやつ、賢そうなやつを集めたつもりだ」
口が堅そう、というフレーズを聞き、優太は龍太郎や天志郎、隼人の方を見る。
すると、優太の視線に気づいた天志郎が口を開いた。
「優太、お前今、俺たちが口が軽そうなやつって目をしたな」
「……別に」
龍太郎が答える。
「俺たちは学校で一番口が堅いんだぜ」
その一言で、優太は彼らが口が軽いということを悟り、また彼らを選んだ篤彦に飽きれ、照を気の毒に思う。
「あとは、照次第だな」
「……そう、だよね」
「関係が壊れること承知で、悠に気持ちを伝えろ。そうすれば必ずうまくいく」
「うん……」
「弱気になるな!!お前はスタイルも良いし、頭も良いし、性格も良い奴だ!!絶対に大丈夫だ!!」
篤彦の声援に、照は笑顔になる。
「分かったよ篤彦…みんな、色々と迷惑をかけてごめん」
「気にするな!!」
「頑張って下さい!!」
「やれば出来るさ!!」
「照、お前なら大丈夫だよ」
全員は円陣で腕を肩に回す。

「女子やこのメンバー以外の男子にはばれない様に作戦を実行する。絶対に成功させるぞ!!」


 「「「「「「「おぉぉーーーー!!!!!!」」」」」」」


***** ***** *****


そんな優太たちの話を、盗み聞きしていた人物が2人いた。
優太の部屋の扉に片耳を付けた奈織、鈴花は7人の大声を聞き、顔を合わせる。
「また面倒くさそうなことを……」
「悠ちゃん、大丈夫かな?」
鈴花の心配そうな声に、奈織は考える。
「これは手伝うべきか…それとも邪魔するべきか……」
「男子だけじゃ心配だよね。理君とか優太君とか、真面目な人もいるけど……」
「2人が良くても、照を除いた4人、篤彦、龍太郎、隼人、そして天志郎は絶対に何か仕出かすわ」
奈織は立ち上がり、決心する。
「とりあえず、私たちは私たちでチームを結成して動くわよ」
「えぇ!?」
奈織の言葉に、鈴花は驚く。

「照の告白大作戦……私たちも参加させてもらう」