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複雑・ファジー小説
- Re: Lost colors ( No.1 )
- 日時: 2014/01/06 17:45
- 名前: サカズキ (ID: gOBbXtG8)
俺は河上淳也。周りからはジュンちゃんと呼ばれているが、あまりいい気がしない。
そんなことよりも、今世界は大変なことになっている。言わずもがな、世界に色が無い———いわば、消えたことだ。
正確に言えば太陽の光の変化によって人類の目がおかしくなったのだが。
で、何が大変かと言えばまず信号だ。
色を失ったことにより、三色で色分けされていたはずの信号が非常に分かりにくくなっている。
明暗、つまり白黒だけは俺たち人類の目で捉えれるのだが、信号の色への依存性は思っていた以上に凄かったらしい。
交通事故の件数は例年の10倍以上にも膨れ上がっており、世界は最早混沌へと落ちている。
さらには画家など、そういう職業を本職としている人たちは失業していくばかりだという。
因みに、田舎の方はそこまで苦労していないだろうと言う連中がいるようだが、どうやらそうではないらしい。
俺は田舎でも都会でも育ったから分かるのだが、田舎者は畑に植わっている野菜の色や、萌える山並みの木々の僅かな色の違いでがどっちがどっちかを判断しているのだ。
まあ都会にしろ田舎にしろ、道を完全に暗記している人こそいれど、困る人は少なくないのが現状である。
何にせよ、色が見えなくなってしまった現象は世界に混乱を招いた。
このモノクロの世界で、人は何が出来る?これから、文字や図だけで生きていくのか?
きっとそれはそれで困る。いずれはそういう生き方でも慣れるのだろうが、気分はあまりよくないだろう。
そうして現在、人々は『色』の存在を忘れてしまった。
だが何故だろうか。俺ははっきりと覚えている。
赤と言えば炎、藍と言えば海、緑と言えば山と言った風に、どのような色だったのかはっきり覚えている。
———全く、一体何故だ……その答えは出ない。きっと永遠に。
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