複雑・ファジー小説

Re: Lost colors ( No.4 )
日時: 2014/01/17 18:21
名前: サカズキ (ID: gOBbXtG8)

「そういえばジュンちゃんさー」
「ジュンちゃんやめい。で、何だ?」

 登校中、俺は千影に呼びかけられた。
 かつては赤や青で染められていたはずの道路標識が、白黒の標識として俺の視界に映る。

「超能力覚醒したー?」

 超能力。
 それは人類が『一人一種類だけ』使うことの出来る、ある意味便利な能力だ。
 人が超能力を使えるようになるのは、個人差はあるが、大体思春期前後と言われている。
 そしてどの様な超能力が使えるようになるのか。それは不確定要素にある。
 なぜなら、親からの遺伝という物凄くややこしい方法で、どの能力が出来上がるか変わるからだ。
 故に多くの能力こそあれど、特殊な能力が突然変異で生まれる可能性だってある。ある意味、未だ未知なる存在だ。

 その超能力なのだが、俺は高校生にもなって未だ覚醒していない。
 個人差という話が俺を無理矢理納得させているが、周囲はそれに茶々を入れやがる。
 不愉快だ。

「まだ覚醒してねぇけど何か?」
「……ジュンちゃん、目、笑ってない」

 目が笑ってない?そりゃそうだぜ草薙。
 周囲になるべく「気にしていない」という表情を向けているだけであって、内心物凄く不愉快なのだから。

「ご、ごめんごめんっ」

 パキパキと、あの独特の音を鳴らす俺の指。
 千影は俺のそんな手に、苦笑いを浮かべながら自分の手を重ねて落ち着かせようとするが、もう遅い。
 刹那俺の拳は———流石に女を殴るわけにはいかないから、そのままガードレールへ。

 いったはずだったが———


ドカッ!


 何か柔らかいものを殴った気がした。
 ハッとして落ち着いて、そして改めて時分の視界を確認したら、俺の拳は見事、大蔵のヤツにヒットしていた。
 横っ腹に鉄拳を入れられた大蔵は、何とも言えない呻き声を上げながらその場に力尽きる。

「河上……殴るなら女と公共物以外の、壊れて困らないものにしてくれ……」
「あ、あぁ。……大丈夫か?」
「俺なら平気さ。いつつっ!」

 その後学校に着くまで、大蔵は呻き声を上げ続けていた。
 何となくもう一発殴りたくなってきたがそこは我慢。