複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.104 )
日時: 2014/02/09 15:28
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 安全を確認して降下したシグナたち。

「黎明兄ちゃん!」

 そして開口一番、飛沫は目の前のフードの男にそう呼びかけた。
うん?と言いながら、その飛沫が黎明と呼んだフードの男はゆっくりとした動作で振り返る。
そして飛沫は顔を目撃するなり、大またでスタスタとその男———黎明に向かって歩み寄った。

「あぁ、飛沫。……久し振りだね……っ!?」

 途端、ビンタしたかのような小気味よい音がした。
その際シグナとリュイが一瞬だけ体を震わせたのだが、それは別の話である。
やはりというか、黎明は右の頬が手形に赤くなっている。

「何が久し振りよ!今の今まで一回も連絡寄越さないで何をしてるかと思えば……」
「ああもう、ごめんってば」

 シグナは何時ぞやの光景を思い出した。
異性に居場所を心配されて怒鳴られてビンタを喰らうといえば、思い出す限りではあの日しかない。
思わず悪寒が走った彼が、なるべく周囲には、特にマルタには気付かれないように務めるのだった。

 そうしているうちに会話に一段落ついたらしい飛沫が、くるりとターンして黎明と共にシグナたちに向き直った。

「えっと、コレ私の兄」
「コレって……あぁもう、悪かったからそう腐らないでよ」

 そういいつつ黎明は、その被っていたフードを取る。
品のよい顔立ち、グレーのさらさらした髪、緑の穏やかな目が特徴だ。

「えっと、黎明です。僕の妹が迷惑かけてるみたいですみませぐはっ!!」

 突然、飛沫の鉄拳が黎明の横っ腹に命中。
びっくりする一同と、鉄拳がクリーンヒットしたらしく呻く黎明。
それを他所に飛沫は、彼の隣で明後日のほうを向いた。

「……悪い子ではないので、仲良くしてやってください」
「あはは、もう仲良くやってけてますがね」

 そのシグナの言葉に、飛沫は皆の気付かない位置で頬を桜色に染めた。
一方でマルタが何やらシグナに向けて妬いたような目線を送っていたが、少なくともシグナはそれに気付かなかった。
シュラーも状況がよくわからないのか、何故リュイとジュリが肩を震わせて必死に笑いを堪えているのかわからないようだ。