複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.108 )
- 日時: 2014/02/09 19:04
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
シグナと黎明が脱衣所に入ったときと同時刻、何か竹をを破壊するような音が聞こえたそうだ。
彼らが身体の水分を拭き始めようとした頃、少女丁度三人くらいの悲鳴が聞こえたそうだ。
彼らが服を着始めた頃、今度は男子丁度二人くらいの悲鳴が聞こえたそうだ。
「シグナ君、シュラーとリュイ、死んでないよね?」
「まあ腕の骨一本折る程度で済むだろ。恐らく」
ボキッという音が露天風呂に響いた頃、彼らは風呂に取り残された二人を心配したそうだ。
人がいなくて本当によかった。それはシグナと黎明だけでなく、未だ露天風呂にいる人たちもそう思っていることだろう。
「ねぇアンタ達、今風呂の方から悲鳴が聞こえてきたんだけど……痴漢でもいたかい?」
苦笑するしかないシグナと黎明の元へ、彼らに風呂を貸しきった宿の女将がやってきた。
「あー、痴漢はいませんでした」
「ちょっとした事故なら発生しておりましたが、まあ彼らだけで解決できるでしょう」
「そうかい?ま、そろそろご飯ができるよ。運んでやるから、部屋に戻ってなさいね」
「はい」
+ + + +
シグナと黎明は部屋に戻ってきた。
その最上級ともいえる和室は、慣れない二人の気分を落ち着かせようとしない。
窓からの眺めは決していいものではないが、それでもなかなか小規模だが夜景が楽しめる。
そうして二人の間に沈黙が流れていた頃、襖が開いた。
入ってきたのは、腕を組んで怒っている様子のマルタと飛沫とジュリだった。
そして後ろから、肩を落として下を向いているシュラーとリュイもやってくる。
「ど、どうした?」
「どうしたもこうしたも……」
自分は何も知らない。そんな装いをしているシグナが最初に口を開いく。
それに応えたのは、非常にぶっきらぼうなマルタ。彼女の声色が普段より低いと分かる。
するとマルタは項垂れているシュラーとリュイに向けてビシッと指差し、愚痴るようにシグナと黎明に話し始めた。
「こいつらトラブルって名目で女湯覗いてきたんだよ!?」
「覗くっていうか、最早しっかり見てたよ。ね?お兄ちゃんっ」
「うん。仕切り思いっきりぶち壊してきたし」
ある意味というかやはりというか、シグナと黎明が想像していた光景と同じのがマルタの説明でリピートされた。
ジュリもリュイに笑いかけているが、明らかに目が笑っていない。
ご愁傷様。そう思うことしか出来ないシグナと黎明であった。