複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.115 )
- 日時: 2014/02/11 09:43
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
———軍神イフリート
それは虚空の魔方陣より現れ出で、その灼熱の業火で全てを燃やし尽くした巨人。
———軍神バハムート
それは天空の空間を喰い破り、その神気だけで天地を制したという不死鳥。
———軍神オーディーン
それは時折戦場に現れ出で、正義に絶対の勝利を与えた八本足の馬に乗る巨大な騎士。
———軍神アレキサンダー
それは膨大な魔力を放つ魔方陣より、森羅万象を破壊する大地が化けた巨塔。
———軍神ディヴァイアサン
それは全てを無に帰す、何処からやってきたのか知られていない神龍。
+ + + +
「ディヴァイアサンって、俺の家名じゃないか」
「へーっ、古代言語読めるんだ?」
グレムリン地方のジャングルの中へ来た一向。彼らは雨宿り序に見つけた何かの石碑を見ていた。
かなり古いものらしく、一部がカビにやられたり風雨で文字が消えていたりしている。
その中から読めるものだけを抜粋していった結果、一番下にシグナの家名を冠す軍神が。
「これ……本当にシグナと関係あるの?っていうか、軍神って何よ」
飛沫が訝しげに、その形のいい眉根をひそめている。
軍神とは何か。そんな飛沫の疑問に反応したのは黎明だった。
軍神はね———その言いかけに皆は彼を振り返る。
「遥か昔の———今より文明が発達していたといわれていた大昔の時代。大体6000年も前になるか。その時は、暗黒魔道対戦っていう500年も続いた世界大戦があったんだよ。軍神は、そのときの技術で作られた人工生命体だ」
「あぁ———」
シグナとマルタは歴史の授業で習ったことを思い出した。
時は遡ること遥か6000年。
そのときはアストライア文明という、今よりも大きく技術が発展した文明が栄えた時代があった。
そしてその時代の末期、暗黒魔道対戦という500年もの間続いた世界規模の戦乱が起こったという。
その争いの原因ははっきりとは判明していないが、一説には領土争いとあり、今ではそれが最も有力説とされる。
そして重要なのは、その先の出来事。
ある日ほぼ全ての人類や生物、建物などが一瞬にして消え去ったそうだ。
それも理由は判明していないが、僅かに残った当時の遺跡から、学者たちは魔力の世界規模の暴発と結論付けている。
だがそれは、世界中の魔力研究者達より"そんなことは当時の技術を以ってしてもありえない"と反論されている。
だがシグナは、何かが繋がったような気がした。
それは、ディヴァイアサンに関する資料が未だ殆どないからこその見解ではあるが。
この目前の石碑に彫られていることが正しければ、ディヴァイアサンが人々や建物を無に返したのかもしれない。
全てを無に帰す———その言い回しが正しければ。
当時の技術は現代よりも大きく発展している。無というものが何なのか。それについても、現代より詳しく分かっていてもおかしくはなかった時代だ。
差し詰め、ディヴァイアサンをコントロールできなかったというところか。シグナはそう結論付けた。
「なぁ、黎明」
「うん?」
シグナは軍神について詳しそうな黎明に、それらの行く末を聞くことにした。
「軍神って、人々が消滅してからどうなったんだ?」
「確かだけど、昔は沢山軍神がいたものだけど、殆どはそのときに人々と共に消えたらしいよ」
「消えた、か」
「あぁでも、一部残った軍神もいるよ。でもそいつらは何故か、宝玉みたいな形で残ってるってさ」
「———っ!?」
シグナはそれを聞くなり目を見開いた。同時に実家の風景を思い出す。
時は幼い頃、父に初めて地下室へ連れてこられたときだった。
当時の映像が鮮明に脳内で再生される。
+ + + +
「ねぇねぇ、これなあに?」
幼い彼が見ているものは、白銀に輝くとても美しいオーブ。
そのオーブの中には、当時のシグナにはよく分からなかった金の紋章が浮かんでいる。
「これは、ディヴァイアサンの宝玉(オーブ)だ。お父さんたちの家計を代々守ってきてくれている神様だよ」
「すごーい。かみちゃまにお参りしなきゃ!」
+ + + +
その映像を見た今のシグナは、そのオーブの正体が分かった。
この石碑には、軍神の名前と解説の横にそれぞれ違った紋章が彫られている。恐らくは、それぞれの軍神のものだろう。
そして、ディヴァイアサンの紋章。それがシグナの脳内で再生されたオーブに浮かぶ紋章と同じなのだ。
「どうかしたか?」
リュイが突然ボーっとしだしたシグナを呼びかける。
呼びかけれた彼の顔は血の気を失っていた。目も虚ろになっており、その身体も僅かにだが震えている。
そして、発した言葉でさえ少し震えていた。
「ディヴァイアサンのオーブ、俺の家(ウチ)にある……!」