複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.117 )
- 日時: 2014/02/11 14:36
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
「えっ……マジで?」
その言葉を聞いた一同は、目を見開いたまま呆然とするしかなかった。
一方でシグナは膝から崩れ、その場に座り込んでしまった。マルタが慌てて彼に駆け寄る。
例えシグナや黎明の考え方が誤っていようが、世界の命をほぼ一瞬のうちに無へと返した軍神。
その名を冠すオーブが自分の家の地下にあると考えてしまうと、やはり気分はよくないというものだ。
いつかディヴァイアサンが目覚めるのではないか。シグナはどうしてもそう考えては杞憂になってしまう。
(俺の身内は"あれ"の正体を知っていて保管しているんだよな?二度と目覚めないように封印してあるだけなんだよな?そうなんだよな?……そうだよ、な)
身内がディヴァイアサンを封じている。そう自分に言い聞かせたが———
(それとも身内は"あれ"の正体を知らないでただ持ってるだけなのか?それとも正体を知っていて、いつか"あれ"を使おうとか思ってるんじゃ……ないだろうな……)
杞憂になりすぎた所為か、脳裏を様々な可能性が過ぎった。
それらが頭の中で虚像となるたび、彼はだんだんと震えが強くなっていく。
だがその震えは、自分を包む柔らかい何かによって一瞬で止まる。
震えを止めた正体はマルタだった。先日と同じジャスミンの香りがふわりと漂い、シグナの鼻を擽る。
「シグナ、今は目の前の事に集中しよ?そうしたらその軍神だって、目覚めることがなくなるかもしれないじゃない」
「ま、まあそうだけどよ……」
俺は一度知ってしまった事実は気にせずにはいられない。お前も知ってるだろう。
そういいかけたシグナだが、そういいかけるだろうと分かったマルタが彼の唇に人差し指を当てた。
よってそれは阻まれた。代わりにシグナは押さえられた唇をそのままにマルタを見上げる。
彼にとって、マルタに上から目線で見られるのは随分と久し振りだった。
小学校だった時分、一時彼女に身長を抜かされたとき以来で、それまではずっと下から見上げてくるばかりだったのだ。
「もう、こういうときに限ってマイナス思考にならないのっ。らしくないよ?」
今までにない笑顔を浮かべるマルタに、シグナは対応に困った。
後ろからの皆の目線が痛い。それでも当のマルタは全く気にしていない。
どうしようか迷いまくった結果———
「あぁもう、分かったから離れろよ」
結局彼はマルタの抱擁をすり抜け、そのままそっぽを向くことしか出来なかった。
「もう、二人きりの時は意外と素直なのになー……今の反応と来たら……」
「あー、コホン」
「ふふっ、ほら。そういうところが可愛」
「あー!ゴホン!!……ケホッ、ケホッ……」
その後もシグナは、皆の手前かっこ悪いところだけは見せまいと意地を張り続けた。
本人曰く、決してナルシストというわけではない、とのこと。
因みにマルタは、照れても決してかっこ悪くないと後に語っている。
(ははっ、マルタの言うとおりシグナも可愛いところあるじゃん。ねぇ?飛沫?)
(ちょっ、な、何で私に聞くのよ!)
(聞けば最近、よくシグナ君をストーキングしてるそうじゃぐはっ!)
一方でその光景を見ていた黎明は、若干妬いたかのような顔で当の二人を見ていた飛沫をからかっっていた。
だがからかいすぎたのか、彼は昨日に引き続き飛沫の攻撃がクリーンヒット。
今度は拳骨ではなく、肘打ちが頬に当たったようだ。
(なーんか、私も恋したいかも。いいよねーこういうの)
(え?あ、あぁ。うーんと……そう、なのか?)
一方でジュリはリュイの隣に歩み寄った。
だが、リュイはそんな妹の言葉に何を返したらいいか分からないまま、近付かれた距離分だけ彼は身を引いていた。
く、来るなぁ!今にもそんな悲鳴が聞こえてきそうである。