複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.118 )
日時: 2014/02/11 17:35
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

「ここが研究所だ」

 それから何事もなく六日後、シグナたちは件の研究所の前まで来ていた。
出雲神州は全て十一からなる島で、彼らは船を使ってここまできたという。
その際シグナが船に酔っていたのだが、周囲の人物は誰も気付かずにいたとか。

 その出雲神州でグレムリン地方に最も近い島。
そこに研究所が聳え立っているのだが、その無骨な設備はどうも、桜舞い散るこの和の国にそぐわない。
一行は出雲神州にやってきたのと同時に、その華やかな町並みにひどく心を打たれたものだ。
だが周囲が木造住宅なのに対し、この研究所は白い近未来風の壁に囲まれている。
それにかなり巨大で、設備も相当充実していると思われた。

「うわー、如何にも研究所って感じだねお兄ちゃん」
「あ、あぁ。しかし、これはいくらなんでも目立ちすぎだろう」
「周囲の人々は慣れてるみたいだけどね」
「そりゃそうだろう」

 ジュリとリュイがそんな会話を交わしている中、シグナは研究所の扉を開けた。

「うわっ……」

 そして中に入るなり、一同は絶句。
全体的に薄暗く、謎の液体がぐつぐつと煮えていたりと如何にもな雰囲気を醸し出している。
一同は会話もなく、研究所を見渡していた。

「はいはい、お客様ですか?」

 すると奥から、白衣姿でひょろひょろな男が出てきた。
研究者というよりは博士である。
そしてその男は丁寧な仕草で"ジェームス・アロイド"と名乗った。

「一体どの様なご用件で?」
「俺はシグナ。こちらにアルカナを匿っているという話を聞いてやってきました」

 シグナが単刀直入に本題を切り出す。
するとその博士は彼らの自己紹介と本題の内容を聞き終えるなり、なにやら考える仕草をし始めた。

「なるほど、この子達がアルカナ……するとゼノヴィスは」
「?なんです?」
「悪いが、君たちには動きを拘束させてもらうよ」

 急に目つきが変わった博士。
 その博士"ジェームス"が何か呟いたと思ったら、一堂は何か謎の光る輪で身体を縛り上げられた。

「ちょ、何を」

 飛沫が何事だと呟いた次の瞬間。

「ぐあああああ!!」
「し、シグナ!?って、きゃあああ!!」

 突然強力な電流が流れ、シグナとマルタは悶え始めた。

「シグナ!どうした!」

 だが黎明をはじめ、シュラーやリュイたちには何も起きていない。
故に彼らには、何が起きているのか分からなかった。

「さよならだ」

 突然すぎる出来事に一同は状況がつかめないまま、どこかへ転送されてしまった。
そして誰もいなくなったその場で、ジェームスは一人笑い続ける。
その表情には、楽しさと怪しさが半々で表に出ている。

(よし、これでアルカナは我が手中だ!)