複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新!】 ( No.122 )
日時: 2014/02/14 20:09
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

「アハハッ、馬鹿だな兄貴〜!」
「俺の身にもなれ」

 杜宮華実は兄の十六夜空臥と、得物を片手に"大迷宮タルタロス"の中を走り回っていた。
ここはルミナシアと比べてとても特異な空間であり、重力の法則が捻じ曲がっているのが主な特徴である。
さながら、異世界だ。

 この真っ白な空間にはいくつかの光の軌跡が走っており、大小姿形さまざまな黒い物体が浮いている。
その板や球を模る黒い物体は、それぞれが中心に重力を働かせており、言うなれば超小規模な星である。
だが、その黒い物体同士がぶつかり合ったり引き寄せられたりはしていない。
他の重力の干渉を受けず、独立してその場にふわふわと浮いている。

「それにしてもどこだ〜?はやくでてこーい!」

 そんな空間で華実たちは、トーソーシャとツイセキシャの捜索をしていた。
行過ぎたそのリアル鬼ごっこを取り締まろうということで、王国が彼らに依頼を出したのだ。
だが、彼らを追っているのはその二人だけではなかった。

「僕も、決して静観を決め込むわけじゃないのさ」

 フォレスノームも、ここタルタロスに来ている。
だがフォレスノームの場合、やることはトーソーシャとツイセキシャの捜索だけではなかった。

(ゼルフとエレナ。彼らもここにいるはずだけどなぁ)

 ここには、あと二人人物が迷い込んでいた。
正確に言えば、一人が逃げて三人が追ってきたというところである。

 かの盗賊として名高いゼルフが、リリー、リンと手を組んだエレナに追われているのだ。
成り行きはと言えば、まずゼルフにある。エレナの足を切り飛ばした彼は、その後彼女を殺そうともくろんでいた。
だがエレナはいい加減に痺れを切らしたらしく、リリーとリンを仲間に入れてゼルフに戦いを挑む。
流石に三人を相手するには厳しかったらしいゼルフ。彼は逃げ道を求めるため、手負いの状態でこの迷宮へと続く魔方陣に入り込んだ。だがそこをエレナたちに発見されたという。

 その際、仲間のはずのリンが何故ゼルフに手を出しているのか。
理由は至極単純。どうやら、盗賊団の一件で仲間割れをしたらしい。
切欠は、団員に紛れ込んでいたゼルフに恨みをもっている者が暴れだしたこと。
ゼルフを恨む人物は非常に多い。態々団員に紛れ込んでまで復讐をしようとしたものは少なくなかった。
気付けば団員の大多数が復讐心を持つもので溢れており、この時何故かゼルフはリンを敵視したらしい。

 そんな様々な関係を持つ人物たちは、この広大な迷宮で逃走、追跡のパレードを繰り広げている。
この時の彼らは外界———つまりルミナシアの様子など知る由もなかった———