複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新!】 ( No.123 )
- 日時: 2014/02/14 21:03
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
光りだしたマルタの胸からは、暖かな光を放つアルカナが出現した。
次いで残っていたひとつのゼノヴィスが、どこからともなく現われやってくる。
今この場に、八つのアルカナとゼノヴィスが揃った。
「な、何だ?何が起ころうとしてるんだ?」
シグナと葬送丸は身構えた。マルタもそれに倣い、警戒を始める。
アナスターシャやクレファバース、ディも警戒を始める。個人個人の手には、それぞれの得物も握られている。
「もう、シグナさんの心配をしている暇もないのでしょうか」
「そうだね……」
羽ペンを持ったアナスターシャが物寂しげに呟いた。
クレファバースも同じように、その表情を少しだけ曇らせる。
一方でシグナは、ただアルカナとゼノヴィスを見つめるだけであってその会話に耳を貸そうとしない。
「っ!」
突然、アルカナとゼノヴィスが融合を始めた。
一対のそれらが融合を始めると、白く輝きだしてひとつとなる。
ひとつとなったそれらは、白く光り輝いたままだ。
そしてその融合が済んだらしい"何か"は、四つずつに分かれてシグナとマルタの体内へと吸収されてゆく。
『混沌と秩序は調和した。調和し融合したこのひとつの世界で、不純を除いたならば平和は訪れる』
そして全員の脳裏に響いた、聞き覚えのない謎の声。
だがシグナだけは、その声が何かを知っていた。これは世界樹でも、アルカナの声でもない。
(この声は、あのときの———)
脳裏に響いたその言葉は、彼が数ヶ月前に一度聞いたきりである。
それは彼は未だ刻印の力に疎く、エクスカリバー握りたての、この冒険の本当の序盤の方だ。
彼が寮の自室にいた頃、夜に聞こえてきたものだ。
『焔よ———世界が———と同化———に———カナを———』
あのときの声である。
「あぁ!皆さん、外です!」
突然、ディが叫んだ。
外に何があった。そう思ったシグナたちは、天井近くの窓を気にする前に研究室を後にする。
何故アルカナとゼノヴィスが融合したのか。それについて全く考えることなく。
残されたジェームスがその窓から目撃したのは、さながら鮮血のように真っ赤に染まっ雲と紫の空だった。