複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新!】 ( No.124 )
- 日時: 2014/02/14 22:05
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
町中の人々がざわついている。それはそうだ。
先ほどまで温暖だった空気は、今はひんやりと底冷えするような空気に変わっている。
空は青ではなく紫となっており、その空に浮かぶ雲でさえ白ではなく赤い。いや紅い。
咲き乱れていた桜も、今やすっかりと枯れてしまっている。
「コイツは……」
「うん?」
研究所から出るや否や、状況把握が出来て真っ先に葬送丸が反応。
「これは、ジルディアか?」
「ジルディア?」
知らない単語が出てきて、一同は首を傾げる。
葬送丸は目線を空に向けたまま、ジルディアの解説を始めた。
「この世界ルミナシアが秩序なら、俺の住むジルディアという世界は混沌。この様子はジルディアの世界そのものだ」
「マジかよ。じゃあさっきの声は……」
ルミナシアとジルディアが、いい方向として一緒になったということか。
そんなシグナの見解に、葬送丸は黙って頷いた。世界をも操るアルカナやゼノヴィス。やはりその力は侮れない。
やがて葬送丸は、担いでいたその鎌で西を指差した。その先は丁度、シグナたちが通ってきた道が続いている。
「サディスティー王国の領海に、小さな島が浮いているはずだ。そこからタルタロスに入ることが出来る」
「タルタロス?」
またしても知らない単語が出てくる。今度口を開いたのはディだった。
「タルタロスについては三年になったら地理で習いますが、まあネタバレしておきましょうか」
授業内容に関してネタバレして悪いことはないが。という言葉をシグナは飲み込む。
ディの解説を邪魔してはならない。あとでネチネチとネガティブになるからとと、シグナは知っていたからだ。
彼による解説が続く。
「タルタロスとは葬送丸君の言うとおり、サディスティー王国の領海にある絶海の孤島に入り口が存在します。その入り口とは、巨大な魔方陣であり、その中は星の中枢につながっているのです」
「それは違うな」
自信満々の解説に葬送丸があっさり反論した。かくん、とディの肩が落ちる。
あぁ、面倒なことに……。そう思いつつもシグナはとりあえず、葬送丸に解説の続きを請うた。
「中は重力の法則が捻じ曲がった空間が続いている。一度中に入れば、もう上でどっどっちがちが下か分からないぜ。そんなタルタロスだけどよ、いくつか同じ空間がほぼ無限に連なって形成されている。そんな無限の分岐の中でひとつだけの正解の道を通れば、異世界のジルディアに出ることが出来る」
シグナたちは、思った以上に話が大きくてすぐに理解が出来なかった。
「まあ、シグナとマルタにはそこに行ってもらうわけだが、今回の目的はそこじゃない」
葬送丸の解説が続く。
解説というよりは、今回の目的の説明と言ったところか。
「タルタロスには深淵という場所が存在する。そこはこの世界とあの世界を繋ぐ全ての始まり———零の世界というものがあるらしい。そこにさっきの声の言っていた"不純"があるはずだ」
なるほどな、とシグナは頷いた。