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複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新!】 ( No.134 )
- 日時: 2014/02/15 21:47
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
———三年後
「シグナ、私はもう無事に卒業しました。貴方は退学になっちゃったけどね」
サディスティー王国の高台には"Shigna・Divaiasam"と彫られた墓石があった。
彼が行方不明になって二年目に、この豪華で綺麗な墓が立てられたという。
世界を救った英雄として、各国の王も直々にここに出向いたこともあったとか。
そんな墓石の前で座っているのはマルタだった。
仕事が決まって卒業できた彼女は、独り立ちしてからは此処に来る事を日課にしていた。
近くには風情のあるログハウスが建っている。彼女の家だ。
「今日は私の仕事は休み。貴方とゆっくりしたいけど……」
もう気持ちの整理は出来たよ。
そう言って三秒後、彼女のそんな気持ちはひとつの足音によって崩れ去る。
誰か知りあいか。そう思って振り返った彼女の考えは大凡当たっていたようだ。
「全く、誰だよこんな墓立てやがった奴は」
藍がかったホスト風の黒髪。金色の穏やかな目。
腰に携えた聖剣。そんなそこに立つ男の姿を、マルタは知っていた。
自分が愛して止まなかった、最愛の青年だ。
「ただいま、マルタ。あの日誓った、結婚の約束を果たしに来たぜ」
立ち上がったマルタの目からは涙が零れる。
それは一滴ずつ、ポツリポツリとその頬を濡らす。
星空の元で誓った婚約を覚えている、その青年の目を見て。
「三年前の、覚えててくれたんだ……」
彼女は昔と変わらない、確かな彼の腕の中に飛び込んだ。
「お帰りシグナ。……遅いよ、馬鹿ぁ……」
AD3400年、英雄は凱旋した。
生まれ変わった新しい世界を見守るために。
愛した少女との誓いを果たすために———
世界樹の焔とアルカナの加護——完——
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