複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新!】 ( No.2 )
日時: 2013/12/29 16:41
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 その後シグナはマルタと共に、軽い世間話を交わしながら寮へと帰っていった。

 寮は男女で分かれているのではなく、学年ごとに分かれている。
 シグナとマルタは同じ1年生なので、同じ寮へと帰っていった。
 その寮は真新しく、その白い壁は未だ光り輝きそうなほど綺麗である。というのも、これはたった今年造られた寮なのだ。
 かつての1年生の寮は、倒壊の危機があるとされて取り壊されたという。

 購買などの設備も整っているため、他の寮にはない利便さがここにある。
 いつしか上級生からは、その利便さに様々な批判の声が上がっているが、学校側は特に対応しようとせず、上級生達には学校の敷地内にある学生会館で事を全て済まさせようとしている。

 先輩後輩としての人間関係を何とも思わないのか。シグナは毎度毎度そう思っていた。
 現に彼やマルタは生徒会で、全員が全員そうではないが、一部の上級生より何ともいえない目線を送られている。
 因みに『そういう目線』を送らない人物たちは全員、可愛い後輩にあたっても仕方ないと理解しているようだ。

 シグナはマルタと寮の2階で別れた。
 男子は2階にあり、シグナの部屋番号は219号室。因みに女子は3階で、マルタの部屋番号は344号室である。

 シグナは自分の部屋に入り、ベッドに座って一息つく。
 さて、そろそろ復習でもやるか。そう彼が思った頃、世界樹の声が聞こえてきた。若い青年のような声である。

『シグナよ、そなたは第一の目覚めを終えた』
「世界樹か。それは、テレポートの事か?」
『そうだ。次は我より、そなたにこれを授けよう』

 シグナは、テレポートの駆使を完全にマスターできたらしい。
 だが紋章に宿る力を全て引き出せてはいないとの事。シグナは少し肩を落とした。
 そんな彼の目の前に現れたのは、前回は焔の紋章だったのが、今回は一振りの華美なつくりの剣だった。
 それは片手で振るえそうだが十分に長く、銀の鞘には華美な金のラインが流麗に描かれている。

『それを手に取れ』

 言われるがままに、その白い糸で幾重にも巻かれた柄を握るシグナ。
 すると焔の紋章と剣が共鳴し、剣とシグナの体が光り輝きだした。
 彼は驚いて目を見開く中、その白く輝く光に包まれ続け、数秒後に光は消えた。
 そして、それまでは浮いていた剣の重さが腕に伝わった。十分片手で振るえるくらい、とても軽い。

『共鳴を終えたようだな。これよりそなたは、その剣に眠る究極の力を目覚めさせることができるようになる』
「ふうん。テレポートみたいに?」

 シグナは大して興味なさそうに抜刀する。
 鞘と同じような模様と色をしたラインと、鏡のような見た目を持つ刀身が姿を現した。
 キラッ、と刃部が光を反射しており、見ただけでも十分な殺傷能力を持っていると分かる。

『使い込むほどに成長してくぞ』
「へぇ、なんかゲーム見たいじゃん」

 シグナは微笑み、剣を収めた。