複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【オリキャラ求むッ】 ( No.27 )
- 日時: 2013/12/31 20:51
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
道理で蜘蛛の腹が大きかった訳だ。そう二人が納得していると、真っ黒に焦げた大型の蜘蛛が破裂した。
燃え盛る炎の中で二人が警戒していると、破裂した蜘蛛は光となって消え、紅い輝きを放つ光が新たに現れる。
突如、シグナは自分の中にある焔の刻印が騒ぐような感覚を覚えた。
(……?あれは、アルカナ?)
『フッ、そこまで分かるようになろうとは。刻印の力も扱いなれてきたようだな』
シグナがその紅い光をアルカナと仮定すると、世界樹が肯定する。
やはりこの遺跡が怪しかったか、と彼は自分の勘の良さを褒めてやりたかった。
「葬送丸、あれがアルカナだ」
「へぇ、あれが?」
目を見開く葬送丸。そんな彼を尻目に、紅い光はシグナの元へふわふわと飛んでくる。
そして勝手に出現した刻印にそれが収められた。同時に、何か力が湧いてくる感覚も覚えた。
「よし、これで俺の目的は果たせたんだが……葬送丸、お前の目的ってなんだったんだ?」
「ん?あぁ」
葬送丸は遺跡に入る前、ユグドラシル遺跡で確かめたいことがあると言い彼について来ていた。
シグナは、そんな台詞を発した葬送丸の目的は果たせたのだろうか、と聞いていた。
「もう目的は果たせたぜ。内部の構造を再確認したかっただけだしよ」
「そうか。じゃ、戻るか」
シグナは火傷しないように炎を掻い潜り、その場を後にした。
(へぇ、アルカナが……そういう事だったのか。やっぱり、やるしかないかねぇ?)
一方で葬送丸は不敵な笑みを浮かべ、シグナの背中を追いかけながら妙な考え事をしているようだ。
+ + + +
「何事だ?」
「あれ?人の騒ぎ声?」
入り口付近まで戻ってきたシグナと葬送丸。
何やら人々の騒ぎ声がしているようで、様子見の意味も含めて二人は騒ぎの内容を聞くことに。
「おーい!ここか!?煙が出てるのは!」
「細心の注意を払って捜索、消火活動に当たれ!」
「この紫色の変な液体にも気をつけるんだ!」
聞こえてきたのはそんな怒声。
二人は見合い、同時に苦笑した。
「やっべ、俺たちじゃね?この騒ぎの発端」
「どうするか」
この状況で洞窟から出れば、確実に怪しまれる。どう、現状を打破しようか。
二人がうんうん首を捻り唸っていると、悪知恵を働かせたらしい世界樹がシグナに語りかけた。
『テレポートは何も、そなただけが対象とは限らない。目の前の若造と共に、外へワープするのだ』
(へぇ、悪知恵働くなぁ世界樹)
『フッ、これでも森羅万象を記憶に収めている。それくらいはできるさ』
よし、とシグナは葬送丸を見る。彼の目は、妙案でも浮かんだのか?というような顔であった。
「ワープしよう」
「……はい?」
「俺はテレポートが出来る。一緒に商店街の裏道にでも逃げよう」
「はは、悪知恵働くなぁお前」
悪知恵を考え付いたのは世界樹だが、という言葉をシグナは飲み込んだ。
早速彼は葬送丸を連れ、その場からワープする。
同時に消火活動をする予定だったらしい消防隊が、やたら長いホースを片手に遺跡に入り込んできたようだ。
間一髪、とでも言おうか。
+ + + +
その後シグナと葬送丸は、人目の全くない場所へ来ていた。
「よし、じゃあここでお別れだぜ葬送丸」
「おっと、学園へ帰るのか?」
「あぁ、そろそろ帰らないと怪しまれるだろうからよ」
「そうか。じゃあ、また今度そっちへ遊びに行くぜ」
「おう、何時でも来い」
時は夕方。恐らく時差の問題があっても、サディスティーでも夕方か夜だろう。
シグナは葬送丸に別れを告げ、その場から消えた。
(ククッ、人殺ししに遊びにいくんだがな、覚醒者シグナ。星の子の目覚めの時にでも会おうぜ)
+ + + +
シグナは寮の裏口付近に現れた。そしてほっと一息つく。
「ふぅ」
『ご苦労だったな』
「あぁ、まさかこんなに手間取———」
だがゆっくりするのも束の間。
「ちょっと!シグナ!」
突如聞こえてきた、聞き覚えのある女子の怒声。
声のしたほうを振り向けば、やはりシグナの予想通りというべきか、マルタが立っていた。彼女の後ろには、他にも見知った人物が数人が立っている。
その白い頬を膨らませ、物凄く機嫌悪そうに眉を顰めながら、マルタはシグナに歩み寄った。
芝生だというのにそれなりに足音を響かせつつ、のしのしと。そして近付くなり、シグナの頬を思い切りビンタする。
———バシンッ!
「いってぇ!」
景気よく、小気味良い音が響いた。
普段ならこの程度の攻撃は楽々避けれるシグナだが、流石に今は油断していたらしい。
まだまだ未熟者だな、とボソリ呟く世界樹を心の中で黙れと返事しつつ、彼はマルタを見る。
その顔は、先ほどまでは完全に怒っていた顔だったが、今は今にも泣き出しそうな顔だった。
そして案の定マルタは泣き出し、困惑するシグナに思い切り抱きついた。怒りのままに、悲しみのままに。
「今までどこ行ってたのよ!私がどれだけ心配したか分かってる……?」
「あぁ、わるい……じゃなくて、ごめんよ」
自由行動日にこの町から生徒が姿を消すのは珍しくないと思うのだが、とシグナは聞きたかったがやめた。
何故なら彼に向けられる、数人の視線があったからだ。
「あ、女の子泣かせた」
一人は、この町に住むシグナの従妹である『ティア・マーグナル』
彼女はシグナをジトーッとした目で、若干の笑みを浮かべ見ている。
「やれやれ、少しは動きを自重しなさい。折角慕ってくれる可愛い子がいるのですから」
一人は、世界史を担当している教員『ディ・トゥルース』
彼は真面目に注意するように、それでいてどこかからかうようにシグナにそう言った。
因みに彼は生徒会顧問になりたてで、今回の一件もそれが絡んでココにいるのだ。
一人は何も言葉を発していない『飛沫』という少女。
シグナはその少女を発見するなり、一瞬逃げ出しそうになった。
「うげっ!ストーカー女!」
「ストーカーって呼ばないでよ!調査系女子!そう何度も言ってるのに!」
彼女は以前シグナに一目惚れしたらしく、それ以来誰がどう見てもストーカーと言える行動を繰り返してきている。本人は調査系女子と言い張ってはいるが、度が過ぎているとも言えよう。
シグナが逃げ出そうとしたのも考えれなくもないが、それが彼女なりの愛情表現なのだろうと、皆がそう思っていた。
と、シグナにはこのような「女の子を泣かせるな」的な目線が送られていた。
当の彼にとって、その場の居心地は最悪だろう。