複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【オリキャラ求むッ】 ( No.28 )
日時: 2013/12/31 21:42
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 その後シグナは結局、数十分ほどその場で何も発言できないままでいた。
 しばらくして、家の門限があると言い出してつまらなさそうに帰っていったティアを合図に皆は帰ってゆく。
 マルタに関しては泣き止む気配が無いので、心から反省をした(つもりの)シグナは彼女の頭を撫でていた。
 そしてさらに数分後、シグナはもう一発マルタからビンタを食らってから、やっとの思いで開放される。
 実はビンタしてくるだろうと分かっていたシグナだが、ここはあえて、謝罪の意を込めて態と食らったようだ。

「はぁ……」

 何かこういう現状を打破できる力は無いのか、とシグナは世界樹に問うたが、世界樹は笑うだけであった。
 そして本日何度目か最早分からない溜息をつき、寮の前へ。すると、見覚えのある少女の影が彼の視界に入った。

「あれ?リリー?」

 リリーと呼ばれた少女は如何にも嫌そうに振り向いた。

「何」

 口調も嫌そうである。

「いや、こっちは男子寮だぞ。ここで何してる?」
「別に関係ないでしょ。たまたまで何か悪い!?」
「あぁいや、悪くないが」

 リリーはその後、早足に去って行こうとしてやめ、途中でシグナを振り向いた。
 そして彼女の発言は、見事にシグナの疲れを募らせることとなる。

「そういえばアンタ、女の子泣かせたんだってね。最低」

 そういって、リリーは去っていった。

(噂は早いな。しかも相手が女子じゃ、蔓延力は計り知れないか)

 そうやって今までシグナを軽蔑してきたリリーだが、シグナは彼女を特に嫌ってはいないようだ。
 こういうところで、彼の懐の深さが窺えるだろう。

 とはいえ、既に現在精神的にも身体的にも参っているシグナ。彼女の追い討ちはきつかった。
 だがさっさと休もうと思っているところへ、さらに追い討ちがやってくるのだった。

「あーでた!マルタちゃん泣かせたクール系男子!」
「……はぁ」

 シグナはまたもや溜息をつき、声のした背後を振り返る。
 彼の予想通り、やはりと言わんばかりに、そこには『フェル・ターナー』がいた。
 彼女は最早返事する気力すらも無いシグナを笑うと、何処かへ行ってしまった。

「あぁ、今日は厄日か?」

 シグナは寮の昇降口に腰をかけた。
 刻印に宿る魔力も大きな減衰が見られており、世界樹も、早めに休むように言っている。
 そうしようか、とシグナは立ち上がった。が、またしてもやってきた追い討ちに気が遠くなりそうだった。

「女子を泣かせたらしいな。泣かせるんじゃないよ?」

 『ラルス・エターニア』
 彼は生徒でもないのに、何故かこの寮に住んでいる。
 勉強を教えてくれたりするので、シグナにとっては頼りになる存在である。

「勘弁してください。俺散々今まで———」
「あぁ、わかったわかった。すまんな、追い討ちをかけて」

 地味に追い討ちをかけていたつもりだったのか。シグナは少し落ち込んだ。

(今宵は良く眠れそうだな)

 幸いなのは、翌日も自由行動日だということ。
 シグナは寮に入り、晩飯も風呂も済ませて就寝しようとする。
 そして、泣かせたくて泣かせたんじゃない!と心の中で知り合い全員に怒ってから、眠りに付いた。

 アルカナの加護を受けた焔の刻印が、一つ輝きを増した。