複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【オリキャラ求むッ】 ( No.46 )
日時: 2014/01/03 10:27
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 その後マルタはその男の子———クレファバースを連れ、シグナに別れを告げて去っていった。
 残された二人は、ただその二人の背中を見送っていた。それまで街を歩き回っていたので、現在はもう夜である。

 マルタはクレファバースがまだ幼いことから、女子寮で彼を生活させるといっていた。
 男子寮にしないのかと思ったシグナだが、どうやら既に寮の管理人である侍女と教師にに許可を得ていたようだ。
 だったらアナスターシャも頼まれてくれ。と言いかけたが言い損ねたシグナであった。

「あの、私これからどうなるんですか?」
「さあな。だがマルタは教師の許可を得ていた。学校へ行ってみるか」

 シグナはその後、アナスターシャを連れて学校へ向かった。
 その際、その光景を見ていたものがいた。その影は二つ、違う場所から違う思惑を以って。

「あれが核か。早急に取り返さねば」

 一つは、各地で略奪行為を行う盗賊のリーダー『ゼルフ・ニーグラス』
 表向きは盗賊団だが、その黒い甲冑と兜の奥の瞳は完全な悪に染まっていた。

「———フン」

 一つは、学園で唯一即死魔法を操れる男子『シュラー・クルファ』
 ゼルフを知っているのか、彼の邪悪なオーラに気付いていたようだ。
 そこへ、そんな黒い気ばかりが放たれる空間に一つの光がやってくる。
 それはシュラーの元へ近付いていった。

「アナスターシャさん……不思議な方ですね」
「僕に関わるなと言っただろう、天使」

 天使と言われたその少年はヘッドホンを外して首に掛け、その眠そうな半開きの目を彼に向ける。

「僕だって悪魔とは関わりたくありませんよ」
「誰が悪魔だ。だったらいい加減に失せろ」
「ですが彼女が焔についている以上、秘密結社であるエクスペリアから守らねばなりません」
「……チッ」

 天使は去っていった。
 シュラーも大人しく寮に入っていき、それを機にゼルフも、その鎧独特の音を鳴らしながらその場を去った。

 だが、そんな天使を呼び止めるものがいた。

「星野君」
「あ、ティアさん」

 そこにいたのはティア・マーグナル。何故か彼女は自分の得物である魔法拳銃を構え、星野天使に向けている。

「勘違いしないで下さい、ティアさん。僕は貴方やシグナ君の味方です」
「それでも私と貴方は相容れない。それぞれが違う方法で、シグナたちを助けようとしてる」

 涼やかで儚い声色のティアだが、この時は同じ声色でも、どこか雰囲気が違っていた。

「方法が違うだけでしょう。いずれ上層部で動きが見られるはずです。それまででいいので、その銃を収めて」
「はぁ……甘いんだね」

 渋々ながらも、ティアは目つきを緩めて銃を収めた。

「それでは。おやすみなさい」
「うん。いい夢見てね」

 ティアは町へと戻ってゆく。
 そんな姿を見送っていた星野を襲う、月明かりを利用したひとつの影縫い。

「っ!」

 星野は咄嗟に光の魔法『シャインレイ』で周囲を明るく照らし、影を消した。

「チッ」
「リンさんもゼルフさんも、いい加減諦めが悪いですよ?」

 影縫いを使っていたのは、ゼルフについてきた盗賊団の一員である『リン・エルフィリア』
 ゼルフはその場を去ったわけではなかったようだ。

「星野。お前は核の重大さを知らないわけでもないだろう……」
「知ってますよ。だからこそこうしてここにいるのです。最も、ここが僕の生まれ故郷ですが」
「ゼルフ、一旦退きましょう」

 リンのその合図で、ゼルフは渋々彼女と共に闇へ消えた。
 あんな重そうな甲冑をつけた状態で、よくもあのような俊敏な動きが出来るものだ。星野はある意味感心していた。

 そして星野も、天使独特の魔法で空を飛びながら何処かへと消える。

 しかし、そんな一連の動きさえも影で見ていた人物がいた。

「うーん、問題はシグナ君だなー。ボクはすぐにでも動きたいけど」
「止めておきなよ。僕だって、まだ全部を把握してるわけじゃないからね」

 『アルバーン・アウグストゥス』と『フォレスノーム・アルヴェクト』が、ラルスと飛沫と共に傍観していた。

「まあ飛沫ちゃんに限っては、シグナ君のストーキングなのだろうけどね」
「ちょ、ちょっとフォレス!年上を何『ちゃん』付けで呼んでんの!それと、私は調査系女子だってあれほど言ったでしょうがこのボクっ娘が!いい加減に———」

 段々と頭に血が上り始めたらしい飛沫。
 それをラルスにとめられ、フンッ!と可愛い鼻を鳴らし、そっぽを向いた。

「いい加減にしておけ。まあ飛沫が調査に優れているのは分かる」

 そう、彼女の機嫌をとるように。
 一方でフォレスノームは溜息をつき、アルバーンはクスクスと笑っていた。