複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【オリキャラ求むッ】 ( No.62 )
日時: 2014/01/04 11:14
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 マルタは一瞬シグナの言った事の意味が飲み込めないでいたが、すぐに理解できた。
 この世からアルカナが砕け消えたのは周知の事実。それをただシグナが探す。それだけのこと。

「うん、いいよ。アルカナは大事だもんね」
「すまない」

 マルタがあっさりと了承したときだった。

「私達にも手伝わせてください」

 突然の少女の声。
 二人が声のしたほうを振り返ると、制服姿のアナスターシャとクレファバースを始め、飛沫やアルバーンに加え、フォレスノームや何故かティアまでそこにいた。
 ティアは学校見学の名目で来ているらしい。

「やあシグナ君、はじめまして。僕はフォレスノーム。フォレスとでも呼んで」

 フォレスノームはシグナに自己紹介をする。
 シグナはフォレスを知らなかったが、どうやら彼曰く、アルバーンに無理言われ1年の男子寮にいる生徒らしい。
 シグナがよろしくとフォレスノームと握手を交わすと、その手の柔らかさで分かったことがあった。
 男子寮にいる上に一人称が『僕』ではあるが、このフォレスノームは女性だと確信できた。俗に言う僕っ娘である。

 因みに現在、フォレスノームと同じ僕っ娘であるアルバーンは誰にもばれないような完璧な男装している。が、それもまたシグナには見破られたらしい。
 シグナは彼女を見、そして少し笑い、そんな光景に笑われたアルバーンは首を傾げる。
 刹那———

「やれやれ、だんs」
「わー!わー!」

 男装も程々にしておけ、と言いかけたシグナだが、言われかけたアルバーンが慌てて彼の口を手で塞ぐ。
 その光景に一同は頭にハテナを浮かべており、アルバーンが咄嗟に気にするなと言った。
 そして彼女はひっそりと、シグナに耳打ちする。

「ねぇ、何でわかるの?」
「一度見破れば楽勝だ。目つきが同じだからな」
「うーん、わた……ボクはみんなを睨むようにしてるはずなんだけどなー」

 そうやってアルバーンは、にへっと笑う。
 その笑った表情も女の子そのものだがな、とシグナは思った。
 そしてそのたびにアホ毛が動くのが、シグナにとっての密かな面白みとなっている。
 その際に飛沫とマルタがどこか妬いたような目線を彼らに送っていたが、送られていた当の彼らは気付かなかった。

「ま、それはさておき」

 事が一旦落ち着くと、ティアが口を開いた。

「私、シグナの事情知ってるんだよ。シグナが世界樹から授けられた刻印の下でアルカナを探しているって」

 シグナはそれを聞き、どこか驚いたような表情で目を見開いた。

「僕らはこの子から最近知らされたばかりだから、ちょっとまだ理解できてない事情もあるけど」
「それでも手伝うよ、アルカナ探し!」

 フォレスノームも飛沫も知っているようだ。
 一体ティアとどのような人脈があるのか、シグナにとって全く理解できなかったが、少なくともこの場にいる人々は自分の味方だと確信できた彼は感謝の気持ちが溢れ、こう言った。

「ありがとう、みんな」


  + + + +


 その後皆は生徒会の会議室を後にする。が、ティアだけその場に残っていた。

「……」

 そのぼんやりとした表情の内には何が隠されているのか。
 シグナでさえもそれは見切れなかった。

(……星野君。やっぱり、貴方のやり方は違う。……違うよ)

 だが、他人とは違う何かを彼女は背負っている。
 それだけは分かっていたらしい。

 その後ティアは、重い足取りでその場を後にした。