複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【オリキャラ募集開始!】 ( No.7 )
- 日時: 2013/12/29 20:24
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
『手始めに、この雪国でアルカナの源を見つけてみせよ』
「へーい……って、手がかり無しでどうしろと?何かヒントは?」
翌日の自由行動日、シグナはテレポートによりガルバード皇国に来ていた。
現在地は古めかしい商店街が並ぶ裏道。世界樹の誘導によりここにいる彼に、手がかりなんて一つも残されていなかった。
困惑するシグナに世界樹は何もしないでいる。気配がするというだけで、それ以外は知らされていないのが現状である。
『それは我にも分からぬ。分かることは全てそなたに伝えると約束したからな』
世界樹の言うことも最もだ。
アルカナの安否は世界樹そのものの存在にも左右されると、刻印が彼に基礎情報として伝えている。
何よりも自分の危機なのに、試すような真似は流石にしないだろう。
「仕方ない、何とかしてみるか」
シグナはやれやれと首を振ると、得物の調子を確認してから行動を開始した。
人々への聞き込みはせず、まずは商店街を出る。さらに彼は町を出て、街道に出る。
「この街道の先に遺跡があると、授業で習った訳だが。どうだ?」
シグナは地理の授業で、ガルバードに有名な遺跡があると習っていた。
名を「ユグドラシル遺跡」といい、古来より大地の神が眠っているとされる遺跡である。
『ふむ、確かにこの先はユグドラシル遺跡が存在する。行ってみるのもいいだろう』
世界樹の了承の下、彼は街道を突っ走った。
特に強力な魔物がいるわけでもないこの地域は、敵の心配をする必要が無い。
はずだった。
———ドスンッ!
景気よく地面が揺れる。
何事だと背後を振り返ったシグナの目には、絶句するほど巨大な魔物が映った。
それは石で出来た人型の魔物であり、大きさは人の身長の4倍と言ったところである。
その無骨だが整った石の塊に、シグナはゴーレムを連想した。
ゴーレムは古代文明時代に存在していた魔物であり、現在は絶滅したという説が有力だった。
『ふむ、ゴーレムか。心してかかれ』
だが、シグナの予想は当たっていたようだ。
元始から現代まで森羅万象をその記憶に収めてきた世界樹が言うのだ。下手な絶滅説よりもよっぽど当てになる。
———ドスンッ!
悠長なことを考えている場合ではない。そう看破したシグナは早速ゴーレムに飛びかかった。
動きは鈍重なゴーレムだが、いいところに一撃でも食らえば一瞬で潰される。
シグナはなるべく素早く動いて敵を翻弄させる戦法を取った。
やはり、ゴーレムは闇雲にその巨大な腕を振るうだけである。
だが、横へ上へと逃げているシグナにそのようなものが当たるわけが無い。
「とったぁ!」
先日世界樹より授かったその剣。銘を『エクスカリバー』という。
シグナはそのエクスカリバーを抜刀し、続けざまにゴーレムの背中へ居合い斬りを放った。
だが———
ガギィン!
「硬い!?」
剣戟が通じない。
シグナに斬られた筈のゴーレムの背中は、亀裂が入るどころか欠ける事さえなかった。
つまり、全くの無傷である。
「く、くそっ!」
シグナは唾を一つ吐くと、向かってくるゴーレムの腕を後ろへ飛んで避けた。
地面に叩きつけられたそれは大地を抉り、多くの土や石の塊を飛散させる。シグナは刀身でそれらを弾く。
(あーよかった、予め剣を学んでおいて)
ここまで剣の扱いがいいのは刻印のお陰でもあるが、元々彼は剣の道を志している。
腕前はそれなりと、周囲からも評価を受けていた。
しかしここへきて、彼は始めて苦戦を強いられてしまう。このままでは原形すら留めないままに潰されるだろう。
『それでよい』
「は?」
だが、突如聞こえてきた世界樹の声。
それはこのまま防戦一方の展開で構わないと言っていた。
「だ、ダメだ!このままじゃ負けるぞ確実に!」
『よい。そなた、自分の剣を見ろ』
はぁ?と呟きながら、彼は自分の得物を睨むように見る。
その剣は———エクスカリバーは、白く淡く発光していた。
『いよいよ、その剣に宿る力の覚醒が起こるだろう。そのまま戦い続けるのだ』