複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【オリキャラ求むッ】 ( No.70 )
日時: 2014/01/05 17:18
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 立ち上がったその兵器は、今も尚アルカナの光を放っている。
 それは先ほどまで無骨だった機械に神々しささえ与えており、皆は改めてアルカナの力を思い知るのだった。
 そんな神以上の力を持つアルカナ。それに対抗できる術は唯一つ。

(アルカナには、アルカナを?)

 同じだけの力をぶつけるほか無い。それでも人と大型の兵器だ。戦力差は目に見えてシグナの方が不利である。
 だが、やってみないわけには何も始まらない。それに、人がアルカナを操るほど危険なことは無い。
 それは、現在対峙している無骨な兵器にも同じことが言える。それだけアルカナは強力な力を持つ。
 とはいえ、そこは人と機械。どちらの方が物理的に強大な力を持っているのか、どれだけ耐性があるのか。
 それさえも目に見えて、シグナの方が圧倒的に不利である。

 ———いくら刻印の加護があれど、下手をすれば体が消滅するだろう。当の刻印がそう、警報を発している。

 だがいつからか、シグナは世界樹とコンタクトを取れずにいる。もしかしたら枯れてしまう一歩手前なのだろうか。
 もしそうなら世界樹のためにも、この若き命をかけてみようではないか。シグナはそう思った。
 一体何処からそんな無鉄砲な勇気が湧いてくるのか、それは本人も分からない。
 もしかしたら若気の至りならぬ、お人好しの至りなのかもしれない。アルカナの暴走から世界を守ると言う、最大の無鉄砲にして最大のお人好しな彼の性格が災いしたのかもしれない。

「———なぁ、みんな」
「?」
「———死んだら、ごめん」

 一瞬そんなシグナの言葉に硬直した3人。
 だがその後に感じ取った、目の前の兵器と同じ気配。そこでみんなは気付く。

「ちょ、ちょっとシグナ!何やってるの!」
「でもよ、こうしないとこいつに勝てる見込みは無いぜ?このまま俺たちが逃げ出したら、誰がこれを止める?」
「っ!」

 シグナの言うことも最もである。故にマルタは何も反論が出来なかった。
 だが当のシグナにも、またマルタを泣かせてしまうだろうなという罪悪感があった。

 そしてやがて、シグナは刻印の力を解放した。
 限度を越えたそれは、強力はアルカナの光を放つ。

「?」

 そのときだった。無事を祈るように白い手を組み合わせているマルタが、アナスターシャの変異に気付いたのは。

「ターシャちゃん?」

 回復魔法の準備をしていたティアも気付いたようだ。

「どしたの?」

 二人してアナスターシャの顔を覗きこむ。彼女の目は赤く変化している。
 そして、一瞬だけ瞬いた。その光はアルカナと酷似している。

 そんな自分の顔をまじまじと覗かれているにも関わらず、アナスターシャはその羽ペンを手に取った。
 表情を無にして変えないまま、彼女は複雑な魔方陣を描き始め、ものの数秒で描き終わる。
 同時に魔方陣は、またアルカナと同じ色に発光を始めた。

「秩序よ、覚醒者の身を守護せよ」

 そして謎の言葉を口にし始める。

「上には上を。アルカナに加護を」

 やがて言い終わると、同時に魔方陣が真っ白に輝きだした。
 同時に強大な魔力の渦が発生し、マルタとティアを吹き飛ばす。
 まるで資格の無いものの侵入を妨げるかのように。

「全くもう、今日は本当に何なのよ!」
「マルタ、油断しないで」
「え?」

 尻餅をついたままのマルタに対し、ティアは受身でも取ったのか、もう立ち上がっていた。
 そんな彼女の声に促され、シグナたちに注目するマルタ。
 だがティアが見ていた方向は、彼らとは反対の方であった。


 ———パンッ!


 突然の銃声。発生源はティアと、その先にいる男。
 相手の銃弾はティアの魔力銃弾に相殺され、その場に落ちた。
 何かと思い立ち上がったマルタの目に映ったのは、銃を向け合うティアとその謎の男だった。

「怨めしい……邪魔をしないでもらおうか?」

 そこにいた男は、右目にスコープをつけている。
 背中にライフルとロケットランチャーを背負っているその男を、二人は知っていた。

「目黒怨……!」

 ティアの額から一筋の冷や汗が流れる。
 同じくマルタも体が凍ったようにうまく動かすことが出来なくなってしまった。

 絶体絶命。今のシグナたちにピッタリな言葉だろう。