複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新】 ( No.77 )
日時: 2014/01/11 09:44
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 万物の源であるアルカナに勝てるものは事実上無い。
 それは目黒も承知していた周知の事実だが、不覚にも彼はシグナに対抗してしまった。

「クッ……」

 だからだろうか。エクスカリバーの引き起こす鎌鼬で、傷だらけになっても何も言えなかったのは。
 シグナはロケットランチャーの砲撃を直に受けていたが、体が吹き飛ぶどころか、火傷一つ負っていなかった。

「あいつらに傷一つでもつけてみろ。今回は見逃すが、次からは容赦しねぇ」

 シグナはそういうと、未だ倒れ伏したままのマルタたちを連れ、どこかへとワープした。
 残された目黒。彼の前に人影が三つ、近付いてきた。

「無様だな、目黒。アルカナ如きに遅れを取ったか」

 黒い甲冑に身を包む男『ゼルフ』が、片膝をついた状態の目黒を見下ろしている。

「ふざけてもらっては困るぞゼルフ。お前はアルカナの力を知らないだろう」
「うーん……確かに知ってないかもだね」

 黎明が目黒の顔を覗きこむ。

「君が負けたのは、ちょっとした予想外の事態が起きた所為だよ」
「そうそう、気にするモンじゃねぇよ」

 葬送丸が現れる。

「まさかの覚醒率が俺よりあいつの方が上回ってたってだけだ。いや、正確には……今上回った」
「だからといって、このような事態は認められん」

 目黒が立ち上がる。

「まがりなりにも、俺は殺し屋だ」

 そう、彼は殺し屋だ。それも世界中でその名を轟かす殺し屋である。
 そんな殺し屋が対象に負けたのだ。彼なりの矜持がそれを許すはずも無い。

「まあ確かに。じゃあこのまま奴らを追うのか?」
「当たり前だ。必ずやアルカナを回収し、アナスターシャ、クレファバース共にお前の下へつれてこよう」

 目黒の目からは怨念という名の魔力が染み出ている。
 それに若干苦笑しつつも、葬送丸は許可を出した。
 目黒は許可を出されるなり、早速サディスティー王国の方面へと歩みを進めていった。

「葬送丸、僕達はどうするの?」
「そうだなぁ」

 黎明の問いに、葬送丸は不気味な笑みを浮かべる。
 そして、同じくらい不気味な言葉を呟く。

「俺も行くかな」