複雑・ファジー小説

Re: 世界樹の焔とアルカナの加護【お知らせ更新】 ( No.78 )
日時: 2014/01/11 12:58
名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)

 シグナは3分後、再び帝国に来ていた。
 同行者は先ほどとは打って変わって、星野、アルバーン、クレファバースとなっている。
 ティアもマルタもアナスターシャも、傷こそ癒えていたが目覚める気配が無かったので置いてきたという。

(まあ一応寮に預けておいたわけだし、大丈夫だとは思うが)


  + + + +


「それでシグナさん、何処へ向かうのですか?」
「あぁ、イノセント遺跡だ」

 気を取り直したシグナは、改めて新たな同行者に、前回の経験から得たことを元に目的地を伝えた。

「うん、悪くは無いと思うよ〜」

 暢気に賛成したアルバーンは未だ男装をしている。
 シグナにとってはもう分かりきったことだが、クレファバースと星野は見破れていないようだ。

 すると———


 ガルル……


「あ、魔物」
「見れば分かりますよ、アルバーンさん。それも3匹ですね」
「それも見れば分かるっつーの」

 彼らの目の前に、狼型の魔物が三匹現れた。威嚇せんと唸り声を上げている。

「ところで……クレス、武器は?」

 エクスカリバーを抜刀したシグナは、丸腰状態のクレファバースに目を向けた。
 アルバーンはレイピアを構えているし、星野はボクシングのような格闘術が得意と知っているので問題はない。
 だが、武器があるといってついてきた今のクレファバースに武器は無い。

「ボクの武器はこれだよ!」

 そういってクレファバースはシグナに右手を見せた。
 また羽ペンか。そう思ったシグナだが、どうやら違ったらしい。
 クレファバースの右手には、まるで本物で出来てるかのように光り輝く白金の腕輪が嵌められている。

「まさか、これか?」
「まさかのまっさーかっ!だよ!二人ともー、離れてー!」

 シグナを押し退けたクレファバースは、今正に魔物と交戦を開始しようとしている星野とアルバーンにそういった。
 疑問を持ちながらも魔物と距離をとる二人。

「やあ」

 距離を十分にとったと確認できたクレファバース。

 そうして右手を魔物に翳すと刹那、目の前で大爆発が起きた。

「な、なんだぁ?」

 明らかにクレファバースが出した爆発系の魔法なのだろうが、その規模は思った以上に大きかった。
 アルバーンが咄嗟に音の魔法で爆発音を相殺したものの、もしそれ成功していなければ差し詰め、近くの城下町にいる兵士などに騒ぎを聞きつけられるだろう。

「えへへ、魔力の量間違えちゃったっ」

 何食わぬ顔でふにゃ、と笑いながら後頭部を掻くクレファバース。

「えへへーじゃねぇよ。危ないだろうが」

 そうやって注意するシグナの顔には若干何故か笑みが浮かんでいたが、少なくともこの場にいる者たちには知る由も無かった。とりあえず、一行は改めてイノセント遺跡へ向かうことに。