複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.82 )
- 日時: 2014/01/18 13:44
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
「おっと」
「!?」
一行はイノセント遺跡に着いていた。遺跡中に雪が積もっている。
ユグドラシル遺跡とは対照的なここの入り口で、シグナは突如、自分の視界を横切っていった何かに驚いていた。
かと思っていたら今度は、先ほどの何かと同じスピードでもうひとつの何かが通過してゆく。
シグナは朧ながらも、その動体視力で人物像の確認ができた。
「な、何だ?」
「今のは恐らく、追う者と追われる者でしょう」
「はぁ?何それ?」
突如彼を横切っていった先ほどの影二つを、星野は「追う者と追われる者」という説明をした。
「少し前からこの辺りで、トーソーシャと呼ばれる人物とツイセキシャと呼ばれる人物が追いかけっこをしているそうです。逃、追という特殊な魔法属性の下で。しかもその行動範囲は段々と大きくなっているとか」
シグナはその聞いたことの無い属性に驚いた。
逃げる追う。そんな警察と泥棒にとって凄く便利そうな魔法なんてあるのかと。
「ふうん。ま、ほっとけばいいか」
「そうだねー。下手に関わりたくないっ」
「ボクも」
とりあえず一応、トーソーシャたちのことは放っておくことにした。
鬼ごっこくらい好きにさせてやればいいという、シグナの一応の了見で。
+ + + +
「あ、あそこ」
「?」
クレファバースがシグナの袖を引っ張り、進行方向の先を指で指した。
その指先にあったのは人影だった。しかも二つ。
さっきのトーソーシャとやらか。そう思ったシグナだが、違ったようだ。
先ほどの確認できたうっすらとした人相とそれは、容姿が大きくかけ離れていたからだ。
一人は若草色の髪をひとつに纏めた少女だった。
腰には刀を二本携えており、その両手には現在、短剣が握られている。
一人は燃えるような赤い髪が特徴で、その背中の三叉槍が大きな存在感を放っている。
何れも学生のようだ。
「何してるんだ?あいつら」
宛ら兄弟のようなコミュニケーションをとっている二人。だが顔立ちは似ていない。
シグナたちは耳を済ませてみた。
「キャハハハッ!起きろぉー!」
「起きてる!起きてるから頬をつねるなってあ痛ってててて!」
あいつら馬鹿か。それがシグナの第一印象だった。
「華実!痛い!放せって!」
「空臥おもしろーい!」
そんな会話内容を聞き取ったシグナたちは、お互いに顔を見合わせた。
「まあいいや、ほっとこうか」
「そうですね」
「そんなことよりアルカナ!」
+ + + +
「ここが終点のようだが」
一行はそれから、終点らしき場所へ来ていた。
他に分かれ道がなかった一本道だったので、ここがイノセント遺跡の果てだと告げている。
「わー……凄い景色だ〜……」
大きな壁のような岩の間から覗く、人二人分ほどの大きさの穴。
そこから見える向こうの景色は、一面の銀世界が広がっていた。
ここから遥か先に見える緑の草原地帯は、ワールドツリーフォートである。
「すごーい!」
「なっ!おい!」
シグナの静止も聞かず、景色に吸い込まれるように突っ走りだすクレファバース。
あのままでは谷底へ真っ逆さまだ。
仕方がないのでシグナはテレポートで、落ちそうになっているクレファバースの下へ。
そして落ちる寸前に抱きかかえることに成功したはいいが、今度はシグナが谷底へ真っ逆さま。
の、はずだったが———
「うん?」
「えっ」
突如シグナの足元に、謎の発光する半透明の床が現れる。
その水色の輝きを放つその床を、シグナは知っていた。いや、覚えていた。