複雑・ファジー小説
- Re: 世界樹の焔とアルカナの加護 ( No.93 )
- 日時: 2014/02/02 13:35
- 名前: キコリ (ID: gOBbXtG8)
「……」
「リリー、戻ってきなさい……」
「嫌よ。私はゼルフと縁を切ったの!誰が今更戻るかって」
ゼルフ率いる盗賊団『ライオット』でその名を轟かす『リン・エルフィリア』
リリーの実の姉である彼女は、リリーに盗賊団に戻って来いと説得していた。
因みにゼルフはリリーの義兄の立場にいるため、少なからず縁が無いわけではない。
「ライオットにいれば将来の保証をしてあげられる。戻ってきて」
「嫌。私の大切な人は皆、あのゼルフとかいう奴に殺された……もう関わりたくないの!」
人目が無いのが幸いか、このような物騒な話をしていては、第三者がいれば誰もが怪しむだろう。
リリーはこれまで何人も、大切な人をゼルフに目の前で殺されている。
彼女が人と関わることを嫌う理由はそこにある。誰かを失うという悲しさから逃れたいが故に。人を守るだけの力がない、非力な自分を呪うために。
一方でここまでしつこく説得するリンにも、悪気があるわけではない。
実の妹に近くにいてほしい、守ってあげたいという姉としての想いがあっての事だろう。
それでもリリーは頑なに、姉であるリンの想いを跳ね除けていた。
何故という問いに彼女は、全てはゼルフの所為だと言い張る。そもそもゼルフさえいなければ、あるいは全く別の人格だったなら、盗賊団から抜け出すなんてこともなかった、という。
「……」
リンはそんなリリーの反論に言葉を失った。
元凶となるゼルフが自分と関わっている限り、目の前にいる愛おしい妹は自分の元へ戻って来てくれない。
そんな既成事実を改めて思い知ったからである。
「私もお姉ちゃんと一緒にいたいけどさ……」
だが、たった今発せられたその言葉でリンは安心した。まだ絆が途絶えたわけではないと。
彼女は一度自分も盗賊団から抜け出そうかと考えたが、それには渋い顔をせざるを得ない。
下手をすれば、ゼルフから命を狙われることとなってしまう。彼に敵うだけの戦闘力が無い今、それは無謀といえる。
(……仕方ないわね)
一度ここは、あの青年を頼ってみようか。