複雑・ファジー小説

Re: ノンアダルト ナイトメア ( No.1 )
日時: 2014/01/02 22:11
名前: womille (K) (ID: ncaxrNZI)




          プロローグ



薄暗く狭い部屋。
そこには大小さまざまな水晶が所狭しと並べられていた。

きちんと棚に陳列しているものもあれば、床に無造作に転がっているものもある。

その中央の玉座に座っていた一人の人物は、静かに立ち上がった。


「……代理人」


男とも女とも区別がつかない声で、その人物はそう呼んだ。

次の瞬間、玉座の前の空間が黒く渦を巻いたかと思うと、そこに一人の男がひざまずいていた。


「——お呼びでしょうか」


男はその視線を床に落としたまま言った。

『代理人』を呼んだ人物はゆっくりと玉座の後ろに歩き出した。

そこにあるのは、両手を広げるほどの大きさの水晶であった。

その人物は、水晶の中をじっと見つめながら口を開いた。


「箱を」


玉座の前にいた代理人は黒い渦と共に姿を消すと、再びその人物の隣に姿を現した。

その手には、一つのちいさな白い箱が載っている。


「落とすのですか」

代理人は低い声で聞いた。

「あの者たちに」


代理人から箱を受け取った人物は、その口元に不敵な笑みを浮かべた。


「見てみたいのだ。彼らの力を」


そういって、その人物は白い箱を水晶の中に手のひらで押し込んだ。



水晶は、まるで水球のように、その白い箱を吸い込んだ。