複雑・ファジー小説

Re: ノンアダルト ナイトメア ( No.3 )
日時: 2014/01/03 20:49
名前: womille (K) (ID: npB6/xR8)



  第一章    白い箱



          1



「お前はバカか?バカなのか?」
「やっぢまっだぁ〜〜」

男子寮304号室に帰投した三人の反省会が始まった。

トシは苛立ちを露わにして自分の机の上に座り、テツは床をバンバンと叩きながら泣き声を上げている。
スグルはトシのベッドの上で、その様子をため息とともに見つめていた。

「大体、お前みたいなヘタレが先輩に告白するなんて無理な話だったんだ」
トシがイヤホンをしまいながら言った。

「なんだって!」
テツはばっと起き上がって反駁する。
そしてイナバウアーのポーズをとりながら語りだした。

「君たちには一生わかるまい、2年A組出席番号23番汐崎南さんの魅力が!」

スグルは肩をすくめた。
「美人ってことは知ってるけど」
「甘いッ!」
テツはずんずんずん、とスグルに至近距離まで寄ってきた。
ひっ、と思わずスグルは上半身を引いた。というかドン引きした。

「ほんのり甘い香りの艶やかな美しき長い髪、光るような白い素肌、見る者をとろけさせる透き通った瞳!
 そして何といってもそのおしとやかな心!!
 彼女以上の女性がこの世にはたして存在するだろうか!?」
バッ、とテツは自分の胸の前で腕を交差させて引き寄せる。
「だめだこりゃ」
スグルは肩をすくめた。

「椎名林檎はどうした」
トシがスマホをいじりながら問う。

「あれは別よ」とあっさりテツは否定した。「手の届かない理想を語っても仕方がない。が、しかし!!」

テツはスグルから離れると再びイナバウアーのポーズをとった。

「汐崎南はすぐそこに!!目と目を合わせられるほどの距離にいるではないか!これぞまさに運命っ」

出た、運命。
スグルは大きくため息をついた。
テツは運命とか占いとか、そういう話が大好きなのである。

「で、俺たちを散々ひっぱりまわすというわけか」
トシは携帯を机の上に置いた。

「二人が協力するって言ったんじゃないか」
テツはトシをにらみながら言った。
「あぁ言ったさ、だがお前のヘタレさにはもう呆れたぜ!」
トシはキッとテツを睨み返した。

スグルは胸ポケットから、少しボディが太くなったシャープペンを取り出し、
その芯先を、壁にかかっているカレンダーに向けた。
頭をノックすると、パシュンッと小さな音を立てて芯が発射され、カレンダーに突き刺さった。

刺さったのは連続してつけられた×の一番最初の日である。

「初日から一週間は会うことすらできず、」
スグルは芯が刺さった日のちょうど下のマスに狙いを定め、『押し』金を親指でたたいた。

パシュンっと狙い通りに芯はカレンダーに突き刺さる。その日からはまた一週間、△が連続してつけられていた。
「次の一週間は目撃はするものの、恐れをなして逃走」

テツが下を向きだした。トシは窓の外を見つめる。

スグルは右隣のマスにまたシャー芯を撃ち込む。
「そして次の日にようやく声をかけたと思ったら、極度の緊張からか、出てきた最初の一言は『ごめんください』」

トシが吹き出した。「笑うな!」とテツがまた睨む。

「そして今日は『月みたい』だ。もう手がつけられないね」
スグルはぽーいとシャー芯を後ろに投げた。

「どうだ分かったか」
トシは顔を怖がらせてテツに向きなおる。
「お前はどうしようもなくヘタレなんだよ!」
「むむー……」

テツは唸ると、てくてくと自分のベッドへ向かい、そのままぼふっと倒れてしまった。

「……とりあえず、飯を食おう」


トシの意見に賛成し、二人は死人のようになったテツを304号室から引きずり出した。