複雑・ファジー小説
- Re: 学園マーシャルアーティスト ( No.13 )
- 日時: 2016/07/14 19:09
- 名前: 大関 ◆fd.I9FACIE (ID: 9ihy0/Vy)
「此処じゃ。」
重蔵達についていった先は、その広さと物一つ無い環境で黒野も喧嘩でよく使う屋上であった。
「屋上っすか。まっ、妥当な判断ってとこっすかね。」
「喧嘩に持って来いの場所言うたら此処か校舎裏という相場が決まっとるからのぉ。」
屋上のど真ん中まで足を進めた後、重蔵は黒野の方を振り向くとサングラスを外し、投げ捨て、黒野を見据えた。並の者なら目を見ただけで、恐怖で足がすくんでしまう程の強烈な眼力。
黒野はそれに怯む様子はない。寧ろ黒野はそれに対して逆に睨みつける。
屋上の角で見物を決め込むのは菊丸、翼、白石の3人。
「あーぁ、白石って言ったっけ?お宅の部長、終わるよ。」
「相当自信あるみたいだね。こっちはそんなに無いけど。」
菊丸は挑発を投げかけるように、白石に言い放つ。重蔵の情報をそこまで仕入れておらず、不安しかない白石は自分への皮肉も込めて言い返す。
「俺っちを倒したのに謙虚だねぇ………。」
「(ダンナ、負けないでよ……負けたら巻き添えになるから)」
冗談交じりなセリフを心に呟き、白石は黒野の勝利を願った。
暫くにらみ合いを続けていた黒野達もようやく動き始める。
「そんじゃ……始めるで。」
「あぁ、行くぜっ!!」
開始早々、いきなり重蔵の頬に張り手を放つ。黒野の怪力から繰り出されるその打撃は普通なら空中へ錐もみ回転しながら飛んでいくはずだった。しかし、重蔵はそれを耐えた。まるで只のビンタを食らっただけのように。
その先制攻撃を耐えた重蔵は硬く握った拳で黒野の頬目がけて思いっきり殴りつけた。その拳は凄まじい威力であり、打たれ強さがウリの黒野でさえも大きく体勢を崩してしまうほどであった。
重蔵はその隙を見逃さない。追い打ちをかけるように、前蹴りを黒野の顔面に繰り出した。その蹴りは正確に黒野の顔面中央を捉えていた。
だが、黒野もまた重蔵の攻撃を耐えた。その足を腕で振り払い、重蔵の鼻っ柱目がけて頑丈な額を叩きつける。これには重蔵もたまったものではなく、鼻を押さえ、後退した。
「くっ、なかなかやるのぉ……伊達に余所の国で喧嘩してへんな……!」
「ったりめぇよ!場数ならこっちも負けないってもんでぇ!!」
その叫びと共に黒野は地面に右拳をつける。相撲の立ち合い、とどのつまりぶちかましの体勢である。
「(今回は放つ相手が良さそうだ……番長の人柄を見る限り、退く事はないからね……僕の心配も杞憂で終わりそうだねこれは)」
角で観戦していた白石は、その体勢を見て多少笑みをこぼす。流石の白石も黒野のぶちかましの威力に関してはかなりの信頼を寄せている。当たれば一撃で仕留められるほどの威力、そして相手は防御を知らない大道寺。これには白石も勝利を確信すると言う物だ。
黒野は左拳も地面につけ、それと同時に一気に踏み込み、ぶちかましを繰り出した。
「ぬぅっ!!」
白石の目論見通り、大道寺はぶちかましを真正面から受け止めにかかる。しかし、やはりそれを止める事は出来ず、衝撃が体を襲う。黒野はどんどんと押していく。
「あの衝撃で無事なわけがない。きっと番長は気を失ってるよ。勝負あった。」
「それがそうでも無いわけよ。」
「御覧ください。」
確かに重蔵はそのぶちかましで押されている。しかし、なんと言う事か、常人なら確実に気絶しているであろう一撃、白石もお墨付きの威力であるこの技を重蔵は耐えたのだ。
「なっ!?」
「これが重蔵さんの実力です。重蔵さんはこの程度の技では怯みませんよ。」
その光景を見て白石は驚愕。翼と菊丸が逆に笑みを浮かべる結果となる。
そして重蔵は黒野を抱えるように腕をからめ、そのまま勢いを利用して持ち上げた。
「黒野、ワシはのぉ……プロレスファンなんじゃ。プロレス見て覚えたこの技……受けてみぃや!!」
持ち上げた黒野を渾身のパワーボムで地面に叩きつける重蔵。まともに地面に叩きつけられた黒野は、しばらく起き上がれなかった。そのまま重蔵は追い打ちをかけるために、走り寄ろうとする。
「ぐっ……!」
しかし、重蔵の腹部に激痛が走る。受け止めはしたが威力まではどうにも出来ず、その身にダメージをあたいていたのである。黒野の受け止められはしたものの、一矢は報いていたのだ。
「(流石に効いた……ごっつい衝撃じゃけぇ……物凄いパワーじゃ……)」
「(俺様のかましを止めるたぁ腕力だけじゃねぇ、根性もまたスゲェぜ……)」
お互いに何とか立ちあがりながら、先ほどの予想外の状況を生み出した相手に対して心で称賛する。
そして両者、再び構えをとった。
「まさか、大将がそこまで怯むなんてね。」
「やっぱり間違っては無かった。ダンナのぶちかましを止めてもダメージまでは抑えきれない。流石だよ。」
角の3人もまた、驚きとともに笑みを浮かべてその闘いを見物する。