複雑・ファジー小説

Re: 学園マーシャルアーティスト ( No.2 )
日時: 2017/12/07 23:02
名前: 大関 ◆fd.I9FACIE (ID: 9ihy0/Vy)

=第1話 武闘派学園生活、開始=

天下の格闘学科と世界一の格闘部の多さを持つ『学館浜隆高校/ガッカンハマタカコウコウ』、縮めて『学浜』。
此処は古今東西のあらゆる格闘技の達人を輩出する学園である。
この学園はどんなマイナーな格闘技であろうが、人数をそろえて創立届を出せば簡単に創立できるので格闘部だけは非常に多い。
そんな高校に今日も新たな部が創立されたのである。

「っと……これで完成だ……噂を聞いて転校して1日目、俺様の最強伝説がスタートだぜ!」
「掘っ立て小屋だけどね」

とても部室と呼べなさそうな縄文式住居の入口に掛けられた『相撲部』と書かれた看板。
それを見て小屋の前に立っていた2人の男は一喜一憂していたのである。
この学園で創立するのは簡単とはいえ、結果を出せない限りはこの様な掘っ立て小屋で活動するのである。

「しかし此処まで格闘部が大量にあって、何で相撲部が今までなかったんだ? 可笑しいとは思わねぇか、俺様の相棒、白石 泪君よ」
「人気ないからじゃん?」

黒い坊主頭の問いかけに対し、白い髪の男……白石が単刀直入に自らの意見を述べた。
流石に正論とはいえ怒るのも無理はないだろう。ものの見事に頭を殴られてしまった。

「アイタタ……何するのさダンナ」
「率直に言うなよな相棒よぉ……こっちも気にしてんだ!」
「だけどしょうがないよ。見るのは良いとしても、やるとなると……ねぇ」
「うぬぬ……」

流石にそればかりは否定できず、坊主頭の青年は言葉が出ない。
その時である。

「黒野君。白石君」

何処からともなく聞こえてくる声。それに振り向くとそこには茶髪の少女の姿があった。

「久しぶり」
「おぅ、弥生じゃねぇか。大分待たせたが約束通り転校してきたぜ」
「付き添いで僕もね」

白石と坊主頭……もとい黒野は恐らくかつての友人であろう少女、弥生との再開に喜んでいた。

「まぁ、立ち話もあれだ。入れや」
「ボロいけど気にしないでおいて」
「う、うん」

とりあえず中に入った3人。やはり外と同様に中も粗末なものであり、太い柱一本だけしか無い。
つまり言うと相撲で必要な土俵などはないということである。
当然椅子もないので地べたに直接座り込む黒野と白石。弥生は立ったままである。
黒野は座った後に口を開く。

「そんじゃこれで俺達相撲部は本格始動だ。弥生よぉ、昔の約束忘れてないよな?」
「うん」
「マネージャー頼んだぜ」
「わかった……やれる事は頑張るね」

弥生は黒野の言葉を承認し、ちょっと頼りなさげにも見えるものの気合いを見せた。
一方、それを聞いて白石は何か疑問を感じ取る。

「……僕は?」
「決まってんだろ。部員」
「はいっ!?」

いきなり言われた自らの役目。それに対して白石は猛反論を起こす。

「ちょっとちょっと! ダンナ!」
「何驚いてやがる」
「僕は相撲の知識は確かにあるけど、相撲の実力はからっきしだけど!? 僕がやってもお荷物だよ!?」
「やれ」
「無理!」
「ちっ、どうしてもやりたくねぇみたいだな……」
「あたりまえだけど!?」

頭をポリポリと掻き、しょうがねぇなと言わんばかりの表情で黒野は白石に向けて再び口を開いた。

「分かった分かった。お前もマネージャーっつうことで」
「ほっ」

胸をなでおろし、一先ず落ち着きを取り戻す白石。黒野は口を開き、話を進める。

「んでもって、今はこんな貧相な部室だが、とりあえず部員集めて結果出して何とかしたいと思う」
「ちなみに集めるプランは? 一人で個人戦優勝するつもり?」
「お前もわかるだろ?校則を利用するだけだよ」

それを言うと何の事だろうと言いそうな白石を余所に、驚いたように弥生は反応する。

「ま、待って黒野君! もしかして黒野君も参加するつもりなの!?」
「あたぼーよ」
「……嫌な予感しかしない……まさかとは思うけどさ……やっぱりカチコミ?」
「察しがいいじゃねぇか。その通りよ」

学浜に格闘部が異様に多い理由。それはこの様な校則にある。『学館浜隆高校の格闘部同士での対戦は自由に許可をする』。
つまり全国の腕自慢達がこの様なスリル及び校則に縛られない戦いを求めてこの学校に来ているのだ。
尚、『格闘部員が乗り気でない一般生徒に暴行を加えた時、相応の罰を与えることとする』という校則もあるため、一般人に手を出さないのがこの学園の格闘部部員のセオリー。

「カチコミして勝てば俺様の強さも見せつけられて一気に相撲部の宣伝につながる」
「だけど此処は天下の学浜だよ……厳しくない?」
「別に勝てばいいんだろ?楽勝楽勝」
「はぁ……」
「まっ、それに一日目からまさか襲撃なんてあるめぇ。きっちり準備して」
「……悪いけどダンナ……一日目から来たみたい!」

その発言とともに、只でさえみすぼらしい部室が一気に轟音を立てて崩壊。
白石は巻き込まれる直前にまさかと思って察知し、弥生を連れて脱出。しかし、黒野は部室崩壊に巻き込まれてしまった。